全国で波紋「保育士賃金カット」横行の残念実態 今後は「監査対象」になる可能性がある

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委託費の給付関係を所管する内閣府の担当者は、「公定価格に含まれる保育士の人件費も含めて“満額支給”している。休業しても給与を減らさず支給するものと想定して委託費を減らさずに支給している。ノーワークノーペイという状況は想定していない」と説明した。

これを記した初回の記事が掲載された1週間後の4月28日、内閣府は「コロナの影響を受けても運営費用は通常どおり給付を行うため、人件費も適切に対応するように」という内容の通知を出すに至った。

その後、新聞各紙も同様の報道を行った。5月29日には、前述した内閣府の通知に重ねる形で厚生労働省もより具体的な通知を出して、適正な賃金の支払いと年次有給休暇を強制して取得させないよう呼び掛けた。

横浜市や世田谷区は…

国に先駆け、横浜市では4月8日に施設給付費・委託費や職員給与について、保育園の園長や事業者に通知を出している。園児の登園や職員の配置状況に関わらず、給付費・委託費等の支給は通常通り行うこと、職員は常勤・非常勤を問わず、今月に予定されていた勤務表に基づいた給与を払うよう求めている。FAQ(よくある質問と答え)では、残業代や交通費などの手当についても、給与規定等に基づいて対応するよう書かれている。

東京都世田谷区は5月1日、横浜市と同様の通知やFAQを出し、休業や年次有給休暇の取得を促すこと等がないよう、適切な対応をするように求めている。世田谷区では、処遇改善加算について「賃金改善の実績報告で、賃金が減額されていた場合は処遇改善加算が返還となる場合がある」と注意する徹底ぶりだ。処遇改善加算は基準年度(原則、2012年度)と比べて賃金が上がっていなければ、つかないからだ。

こうした通知が市区町村から直接届くことで、不当な賃金カットには歯止めがかかるはずだ。

ある自治体の保育課長は「市区町村が通知を出さないなら守らなくてもいいと考える事業者がいるため、通知をきちんと出したほうがいい」と明かす。実際、都内のある区では、私立の認可保育園で働く保育補助者が、4月中旬の段階では「自宅待機の間は無給」と宣告されていた。国が4月末に人件費に関する通知を出し、ゴールデンウィーク明けに自治体が同様の通知を出すと、園側は「休業中の賃金は満額支給する」と手の平を返した。

東京都小平市では、保育士らが市に通知を出すよう求めた。筆者の記事を読んだことで休業しても満額の賃金が得られると知った非正規雇用の保育士や保育補助者が声をあげた。

小平市内の保育園では、「無給と言われた」「最初は無給と言われたが、あとから6割支給と言われた」「これから園の収入が減るからと言われるばかりで、満額補償に応じてくれない」「正規と非正規は区別する」という露骨なケースまであり、「本来は全額補償されるべきだ」と納得いかない保育士らが、市議会議員や国会議員に窮状を訴えた。

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