「人種差別抗議デモ」世界中で大規模化する理由 アメリカ警察官による黒人男性殺害が引き金

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またパリでは、アダマ・トラオレの家族も声を上げた。トラオレは黒人男性で、2016年に警官に体当たりされ、拘束されている間に死亡した。24歳だった。トラオレの姉(妹)のアッサは、フロイドの死で身も凍るような思いがよみがえったと言う。アッサは「アダマに真実を(La Vérité Pour Adama)」という団体を率いている。

同団体はフェイスブックにこう投稿した。「彼の背中には警官が3人も乗って、彼は『息ができない』と繰り返し訴えていた。(それを見たら)アダマがどれだけ苦しんだかを思わずにはいられない。彼の名前はジョージ・フロイド。アダマと同じように、黒人だからという理由だけで死んだ」。

このように世界各地に非難が広がっていることは、評論家が「アメリカの道徳的権威の崩壊」と呼んでいることを反映してもいる。トランプ大統領はすでに新型コロナウイルスへの対応を批判されており、アメリカは危機におけるリーダーとしての役割を放棄しつつある。

フロイドの事件に抗議するデモは、少なくともアメリカの140都市で行われている。警官とデモ参加者との衝突をとらえた画像は瞬時に世界に広がって、怒りのコメントが集まり、行動が呼びかけられている。

新型コロナの犠牲者にも人種格差

アメリカのデモ参加者たちは、新型コロナによる犠牲者が、移民の集まる地区や黒人に偏っていることにも抗議しているが、世界の活動家たちも、パンデミックにより露呈した大きな格差について訴えている。たとえば、イングランドとウェールズでは、黒人が死亡する確率は白人の2倍だ。

シリア北西部のイドリブ県では、シリア政府が1カ月に及び反体制派を攻撃しているが、そのイドリブ県で2人のアーティストが破壊された建物に壁画を描いた。そこには「息ができない」と「人種差別に『ノー』を」の文字が書かれている。

トランプ大統領が中国の新型コロナへの対応を批判していることに、中国の政府高官は怒りをあらわにしているが、国営のニュースメディアはフロイドの死についての記事を載せ、デモはアメリカの衰退を示す証拠の一つであるとした。

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