ワーママたちが休校長期化で得た「大きな学び」 コロナ後に求められる新しいテレワークとは?

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以前は、平日は学校や塾、習い事で忙しかった子どもたちも、宿題が終わればフリータイムという過ごし方に満足していた様子。17時に吉岡さんが終業した後は、4人並んでテレビを見るのが日課になったという。

「私が好きな韓流ドラマに子どもたちもハマり、韓国語も少し覚えてきたようです。時間ができたことで思いがけないところに興味が広がったのも、この数カ月の収穫だったかもしれません」

6月に入り、それぞれの学校も再開し始めた。だが、これまでと同じように韓国ドラマを楽しむ時間をつくるため、「子どもたちが自分で宿題を管理するようになったのがうれしい。私も残業しないように気をつけないと」と吉岡さんはほほ笑む。

経験を生かした「新しいテレワーク」の必要性

2人の話を聞くだけでも、テレワーク中の育児が親たちにとってかなりの精神的負担になっていたことがわかる。子育てとは、ただお腹を満たしておけばいいということではない。メンタル面のサポートも非常に重要だ。

サポートする内容も年齢とともに変化し、決して金銭では解決できない。今回話を聞いたのはたまたま母親だったが、父親として同じような悩みを抱えていた男性も多かったに違いない。

武田さん、吉岡さんとも、テレワーク中の子育てを試行錯誤した結果、今後の子どもとの関わり方や働き方の見直しにつながった。しかし、両者ともに「仕事の量は普段と変わらなかった」とコメントしていたのも気にかかった。

コロナウイルスの感染拡大という突発的な事態に、企業側も業務量の調整がしづらかったことは理解できる。だが、今後テレワークを普及させていくにあたって、出社してこなしていた仕事の量と在宅でこなす仕事の量が変わらないというのは、はたしてどうなのだろうか。

出社したほうが自分の負担が少ないということであれば、テレワークを選ぶ人は徐々に減っていくだろう。「子どもと過ごせたあの数カ月は楽しかった」と、なんとかやり遂げたこのテレワーク期間をただの思い出話にしてしまうのか。

全体の仕事量を減らすとまではいかなくても、会議の回数の見直しや過剰なメールのやり取りをやめるだけで、テレワーク時の負担は減ってくる。インフラの整備などハード面だけに目を向けるのではなく、この数カ月の経験を基に企業と社員とが積極的に意見を交換することで、今の社会に合った「新しいテレワーク」として定着していくだろう。

樋口 可奈子 ライター、編集者、ファイナンシャルプランナー(AFP)

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ひぐち かなこ / KanakoHiguchi

早稲田大学卒業後、メーカー勤務などを経てライター/編集者に。ビジネス誌で商業施設のニューオープンや女性を中心とした働く世代の消費トレンドを担当。ファイナンシャルプランナー(AFP)として家計相談や不動産関連の記事も執筆。特技は整理整頓。趣味はドライブと断捨離

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