「子ども手当」論争から日本の病巣が見える--リチャード・カッツ

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 「社会保障の衰退は日本の社会保障制度が国民全体を対象にしていないのが理由である。社会保障制度が職業や会社の規模、婚姻などによって分割されているからだ」

事実、年金保険料を支払わない若者は増えている。また高齢者も他人の子どもや孫に給付を払うために税金を納めることを渋っている。

1985年当時、18歳未満の子どもを養育する家計は全所帯の45%に達していた。2005年になると、その比率は25%にまで低下。逆に65歳以上の高齢者を抱える世帯は27%から39%に増えている。高齢世帯の半分は独居世帯で、現在、親族と一緒に住んでいない高齢世帯の数は子ども一人の世帯の倍になっている。

子どもの養育のために金銭的な負担を抱えている世帯数は、高齢者のための金銭的な負担を負っている世帯数よりも少ないのだ。この事実が、政府予算に対する有権者の姿勢に影響を与えているのは間違いない。

こうした有権者の態度は、単なる文化的な遺産ではない。それは現在の状況、制度、指導者の行動によって形作られたものである。経済改革を成功させるために、指導者は国民の姿勢を変えるような状況をつくり出さなければならない。そうした方策の一つが、子ども手当のような国民全体を対象とする社会政策である。過去に日本は社会的な姿勢を変えた経験がある。もう一度、同じことができるはずである。

Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。

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