温室効果ガス25%削減に挑む--鉄鋼業界、新技術の実用化を加速
まず「エコプロセス」。製造工程で発生するCO2を削減する「乾いたぞうきん絞り」だ。自家発電、共同火力発電設備の高効率化、廃プラスチックのリサイクル活用による石炭の使用量削減、省エネ設備の増強などで、90年比9%のCO2削減を図る。「エコプロダクト」とは、日本の高級鋼材を使用した製品によるCO2削減への貢献。軽くても高い強度を持つハイテン(高張力鋼材)や、電磁鋼板、船舶用でもハイテン厚板を用意し、使用燃料の抑制へつなげる。
そして、最も効果が大きいのが「エコソリューション」だ。すでに日本で開発・実用化した省エネ技術を海外に移転するだけで、全世界で年間3・4億トン削減できるという。3・4億トンは日本の排出量の25%に相当。「地球益」が最も大きい活動といえる。
さらに長期的取り組みも始まった。水素還元やCO2の分離・回収などで2050年までにCO2排出量を30%削減する「コース50」だ。
新日本製鉄君津工場では、化学吸収法を使い高炉ガスからCO2を濃縮・分離し取り出す、プロセス評価プラント(日量30トン)の建設が進む。アルカリ性水溶液(吸収液)とCO2含有ガスを接触させ、再生塔で吸収液を加熱し高純度のCO2を回収する技術だ。ここでもガスを抑制できるが、その濃縮したCO2は、地下や海底に貯留してしまう。
また石炭の代わりに水素を使う研究もある。水素還元だと水が出るだけでCO2は発生しない。ただ、水素には吸熱作用があり、別途エネルギーが必要という問題はある。それでも30年に向け開発し、50年までに各高炉に導入する計画だ。
JFEスチール東日本製鉄所(京浜地区)で始まるのが新原料フェロコークスの試験製造。高炉にこのフェロコークスを入れると、コークスは少量で済み、低温で溶銑が作れる。09年末から2年の工期、約35億円をかけ建設する。高炉大手が参画する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるプロジェクトの一環だ。「フェロコークスを含め、炭酸ガス削減や省エネ技術を開発し、合理性のある範囲で投資していく」(小俣一夫JFEスチール東日本製鉄所長)。