温室効果ガス25%削減に挑む--鉄鋼業界、新技術の実用化を加速
「日本は主要な省エネ設備である連続鋳造、コークス炉や転炉ガスの回収、CDQ(コークス乾式消火設備)、TRT(高炉炉頂圧発電)の装備率はほぼ100%。環境税や排出量取引のために実現したわけではなく、自主的にやってきた」(市川祐三・日本鉄鋼連盟専務理事)。
たとえば転炉ガス回収では韓国でも6割弱にすぎず、他の地域は2割を切る。CDQも普及が遅れている。CDQとは赤熱したコークスを不活性ガスで消火する方法で、その際の熱も活用するというもの。また、TRTは炉頂のガス圧力を利用して発電するもので、日韓以外は普及率2割程度にとどまる。この導入度の違いが国ごとの効率性の差なのだ。
日本の高炉メーカーは1971~89年度で累計3兆円を投資し20%の省エネを達成。90~2008年度も1・7兆円を投資し、10%の省エネを進めた。これは環境保護だけが目的ではない。人件費、電気代、法人税等のコストが割高な日本でグローバル競争を戦うためには、少しでも投入エネルギー量を減らすことができる省エネ投資には、合理性はあったのだ。
そのため、90年度を起点にさらに25%削減するためには、工場の休止も含めた生産抑制を行うしかない。「関連企業も多い産業なだけに空洞化すれば雇用喪失も大きい。だからといって鉄の需要が減るわけでもないので、減産分はCO2削減義務のない近隣諸国からの鋼材輸入が増えるだけ。地球環境にはマイナス。本末転倒といえる」(市川専務理事)。
製鉄で出るのは水だけ 実証実験がスタート
が、鉄鋼業界は反対だけを主張しているわけではない。09年11月、日本の鉄鋼業界は「エコプロセス」「エコプロダクト」「エコソリューション」の三つの取り組みにより、温暖化抑制に取り組むことを表明した。