また、よく報道されているように、ニューヨークでは、どちらかと言えば、貧しい人々の地域で感染が深刻である。また、シンガポールで第2波があったのも、外国人労働者の衛生環境が悪すぎたからだ。
アメリカでは、貧困層を中心に医療アクセスが限定的であったことも重症化を促進した。重症患者があふれたことで、それで医療崩壊が加速した側面がある。欧米も、富裕層や著名人の死亡者は、高齢者などを除けばおおむね限定的だ。ボリス・ジョンソン首相などは重症化したが、彼は十分な医療アクセスがあったので、助かっている。
結局、日本では相対的に深刻度が低く、言ってみれば「ほとんどの人が好きなときに好きな病院に行ける」ことがむしろ問題であり、制限をかけることに必死だったわけだ。
また、貧困層の衛生状態の差は、天と地に近いほど差があり、基本的な生活条件が「相対的にまし」であることが大きく寄与した。さらに、高齢者が多い諸施設での対策も、欧米よりは徹底していた。たとえば、私の母が入居している施設は、数年前からインフルエンザ対策で、冬の時期は面会が全面禁止だった。またできる期間もマスク、手指消毒は徹底させられていた。
このように専門家でもない私が、新型コロナの総括をするのは問題である。だが、欧米人が欧米で失敗して、日本が成功すると「それはただの謎だ」、と言い放つよりはましであろう。
「真の危機」はこれからやって来る
さて、問題は経済である。
「大きな危機」とまでは言えなかったはずの感染症の危機に対して、経済対策は大盤振る舞いだ。「前代未聞」「リーマンショック越え」の大規模財政出動をしたことにより、財政危機になる。それが真の危機で、これからそれがやってくる。だから「危機に備えろ」、ということになる。
前述の、コロナの深刻度合いに関しては意見が分かれるだろう。だが、明瞭なのは、経済危機としては、瞬間風速だけは前代未聞だったが、トータルの規模では「普通の不況レベルの危機」だ。それに対して、経済対策は前代未聞の規模となる。だから、バランスが悪い、ということは間違いがない。これで財政破綻するかどうかも意見が分かれるだろうが、私は確実に財政破綻すると思う。理由は、前代未聞の感染症はまた必ず、しかも繰り返しやってくるからである。
「100年に1度の危機は10年に1度来る」、とリーマンショックのときにラリー・サマーズ元財務長官は言ったが、人類最大の危機は、21世紀に何度もやってくると私は言いたい。
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