アディダス「海洋廃棄物から靴を作る」本気度 「環境問題をビジネスに変える」日本への教訓
福田:誰もが知っている企業でいえば、「アディダス」が、「海洋プラスチック廃棄物」を原料とした素材でスニーカーやスポーツウェアをつくる取り組みをグローバルで行っています。すでに世界の海洋に投棄されたプラスチック廃棄物を1400トン以上回収し、それをアップサイクルすることで数百億円の事業にしているんです。
「廃棄物」を「大きな事業」に変えたアディダス
福田:重要なのは、環境活動をしっかり「お金にしている」ことです。
日本企業はそういったサステイナビリティ活動、いわゆるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)関連の活動を、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の延長でとらえてしまう。寄付をしたり植林をしたりして。
伊勢谷:数百億円規模の事業になるところまでいくのが重要ですね。そこに投資できるパワーというか、社会的作用が本国(ドイツ)にあるんでしょうね。
福田:海外では、SDGsを「事業機会」としてとらえているんです。アディダスの例でいえば、海洋プラスチックを回収して終わりではなく、製品にしてそれを数百億の事業にしている。ここまでやり切るのがすごいですよね。
伊勢谷:日本だと、巨額の投資をして事業化しようというより、植林などのアピールだけでお茶を濁してしまうところがある。しかも、植林をするにも最終的なエフェクトまでは考えない。人工林は手を入れることも必要ですからね。単に「植えればいい」んじゃない。
福田:そのとおりだと思います。アディダスのように、そこまでの投資ができる経営者がいるのが日本との違いです。海洋プラスチック廃棄物をスニーカーの素材に変えるなんて、簡単なことじゃありません。研究開発投資だけでも、莫大な先行投資をしているはずです。強い意思決定ができる経営者がいるから、従業員の意識も変わっていくんでしょうね。
伊勢谷:「環境問題をビジネスすること」に苦戦してきた僕らとしては、海外の成功事例はわくわくする話です。CSRではなくて、消費者が求める魅力的な商品をつくっているわけですから。しかもそれが、企業全体、従業員や消費者、ひいては社会を引っ張っている原動力になっているんですね。