アディダス「海洋廃棄物から靴を作る」本気度 「環境問題をビジネスに変える」日本への教訓

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福田:「環境負荷」の少ない商品を消費者に選んでもらうために、いま伊勢谷さんとわれわれでやろうとしているのは、消費者に対してそれぞれの服(商品)にどのくらいの「環境負荷」(CO2の排出量や水の使用量など)があるのか、わかりやすく「スコアリング(数値化)」して情報提供することです。

「スコアリング」で消費者の価値観を変える

福田:グローバルでは「サステイナブル・アパレル連合(SAC)」という団体が「HIGGインデックス」という指標を公開しています。僕らはこの指標を利用して、消費者に「製品のスコアリングを情報提供する」という取り組みを始めています。100点満点で点数が低くなるほど環境によくない製品になる。例えば今日私が着ているウールのジャケットをスコアリングしてみると、55点とかなり低い(笑)。

伊勢谷 友介(いせや ゆうすけ)/リバースプロジェクト代表・俳優・監督。1976年、東京都生まれ。 東京藝術大学美術学部修士課程修了。1998年より俳優として活動。2002年、初監督作品『カクト』が公開。2009年、様々な才能を持ったアーティスト・プロデューサーが集結し、「人類が地球に生き残るために」をテーマに、新たな価値とモノの創造、社会貢献活動を行う株式会社リバースプロジェクトを設立(撮影:今祥雄)

伊勢谷:ウールでも再生ウールであれば、「環境負荷」はぐっと低くなりますよね。

福田:一口に「ウール」といっても、「どこでどうやってつくられたか」によって、スコアリングが変わってきます

伊勢谷:でも、現状の「環境負荷」を見ると、やはりウールよりもナイロンやポリエステルなどの合成繊維のほうが、スコアが高くなる傾向があります。とくに再生ナイロンや再生ポリエステルは、なおさらですね。

福田:「ウール」「シルク」「アルパカ」なんて聞くと、自然素材でいいイメージがあります。消費者が環境に貢献しようと、あえてウール100%とかコットン100%の製品を買うことが、「環境負荷」につながる可能性もあるというわけです。

伊勢谷:そうですね。シルクの場合、製造工程で原料から製品になるのはたった17%で、あとはすべて廃棄されます。しかし、製造段階で100%使い切ることができれば、シルクのスコアリングが大きく変わってくると僕は思っているんです。「リバースプロジェクト」では、製造工程を見直してシルクの原料を100%使い切るように変えていくプロジェクトを立ち上げています。

福田:適用できていくと面白いですね。

伊勢谷:多くの企業に「スコアリング」を導入してもらうことができれば、「何円の服(価格)」だけではなく、「何点の服(環境負荷)」という価値観が生まれる。そうすれば、消費者への刺激にもなるし、「本当にいいものをつくろう」という企業努力も見えてくる。「どちらの商品を選ぶか」というときに、新しい価値観が生まれると思います。

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