中国EV大手の「BYD」が半導体子会社増資の訳 パワー半導体「IGBT」で外資の牙城に狙い

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BYDは半導体子会社でIGBTと呼ばれるパワー半導体の開発を進めてきた。写真は2018年に発表した次世代IGBT(BYDのウェブサイトより)

中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)は5月26日、半導体子会社の19億元(約285億円)の増資引き受けに関する契約を戦略投資家と結んだと発表した。

増資を行うのはIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)と呼ばれるパワー半導体の開発・生産を手がける比亜迪半導体(BYDセミコンダクター)。そこにアメリカのベンチャーキャピタル大手「セコイア・キャピタル」の中国向けファンド、中国の投資銀行大手「中国国際金融」(CICC)系列のプライベートエクイティファンド、同じく中国のプライベートエクイティファンドの「国投創新」など14社の投資家が出資する。

増資前のBYDセミコンダクターの企業価値は75億元(約1125億円)と見積もられ、増資完了後はそれが94億元(約1410億円)に増加する。BYDのグループ企業には現在、BYD本体および子会社で電子機器の開発・生産を手がける比亜迪電子(BYDエレクトロニック)という2社の上場企業があるが、近い将来にはBYDセミコンダクターを株式公開し、グループ3社目の上場企業を誕生させるもくろみだ。

内製していた部品やモジュールの外販を推進

IGBTは電力の制御や供給を行うパワー半導体の一種で、EV以外にも鉄道、航空宇宙、スマートグリッドなどさまざまな分野で使われている。EVでは電池の直流電力を交流電力に変換して駆動用モーターに供給する「インバーター」に組み込まれており、その性能が車両の加速能力やエネルギー消費量を左右するキーデバイスだ。

本記事は「財新」の提供記事です

BYDはもともと自動車部品の内製志向が強く、子会社で開発・生産した部品やモジュールを自社製のクルマに搭載していた。しかし2017年末からサプライチェーンの対外開放に転じ、車載用電池やシートの外販を推進。2018年末には自社開発した新世代IGBTの技術を発表した。

車載用IGBTは市場シェアのほとんどを海外メーカーが握っているが、中国の自動車メーカーは国産品への置き換えを志向している。BYDは子会社の上場をテコに増産体制を整え、シェア奪取を狙う。

(財新記者:鄭麗純)
※原文の配信は5月27日

財新編集部

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Caixin

2009年設立の財新は中国の経済メディアとして週刊誌やオンライン媒体を展開している。“独立、客観、公正”という原則を掲げた調査報道を行い、報道統制が厳しい中国で、世界を震撼させるスクープを連発。データ景気指数などの情報サービスも手がける。2019年末に東洋経済新報社と提携した。(新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちらで読めます

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