スズキ、頼みのインドで「V字回復」が難しい理由 ドル箱市場で生産再開するも販売面に不安

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インドではすでに新型コロナで4167人が死亡。累計感染者数が14.5万人に上り、8万人以上が現在も感染している(現地時間5月26日午前8時の時点)。衛生環境が良くなく、医療体制も脆弱なだけに、行動制限を緩和すれば感染者がさらに爆発的に増える大きなリスクと背中合わせだ。

こうした中、スズキは7月に稼働予定だったグジャラート第3工場の稼働延期を決めた。本来は今年4月に稼働予定だったが、昨年の販売の落ち込みを見て、7月に稼働を延期した経緯がある。現時点では稼働時期は未定だ。

期待の新型ハスラーでつまづく

インド事業の先行きが見通せないとなると、頼みの綱は国内販売だが、ここにもコロナ影響が直撃している。インドなど海外から調達している部品の供給が滞って国内生産に支障が出たうえ、コロナ騒動下で消費者の新車購入意欲も低下。4月の国内販売台数は3万1975台と前年同月比で45.2%落ち込んだ。

本来であれば、2020年1月にフルモデルチェンジした新型ハスラーが国内の販売回復を牽引するはずだった。ハスラーはSUVとワゴンの要素を取り入れた軽自動車で、スズキの国内における戦略車種の1つだ。

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が、発売直後の2月、NAタイプのエンジンから異音が確認され生産を一時停止。トラブルを解決して、販売のロケットスタートを切ろうした矢先、今回のコロナ騒動に見舞われてしまった格好だ。4月の販売は4294台と当初の月販目標(6000台)を大きく下回った。

スズキはインドと国内で年間販売台数の7割を販売している。業績はこの2カ国の販売次第だが、インドは先が見通せず、新型コロナ感染拡大の収束が見えてきた国内にしても、今後は経済活動停止による景気悪化影響が懸念される。こうした環境下で今年度をどう乗り切るか、スズキの対応力が問われている。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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