その中心を担っているのが、1929年創業の地元老舗メーカー「小倉メリヤス製造所」だ。高級ベビー服のOEM生産を主力としていた同社は3月下旬に新たに布製マスクを発売。顧客からの直接の注文とともに、コンビニエンスストアや薬局、酒屋、銭湯やレストランなどプロジェクトに呼応した店舗に卸し始めた。
表地は綿、裏地はポリエステルの布製マスクは1枚550円(税抜き)。使い捨てマスクよりも高価だが、洗って何度も使えるのが特徴だ。裏地に制菌加工素材を用いており、黄色ブドウ球菌などの細菌を減らす効果もあるという。使い捨てでないため、廃棄物の削減にもつながる。同マスクは1ロット100枚単位で受注生産に応じている。
区議が発案したマスクプロジェクト
それとは別に、顔の大きな人向けの「メガマスク」も発売。こちらは「顔の大きな僕自身のニーズから開発した」(小倉大典社長)といい、1枚1200円(税別)から購入できる。裏地は従来からの制菌加工に加えてひんやりした触感の機能を持たせている。
マスクプロジェクトを発案したのは、同区の佐藤篤区議だ。3月に自身のフェイスブックに、「区民がマスクを調達できない状況となっている。墨田区はもともとメリヤス産業が盛んで、マスクの生産を始めた事業所もある。区民向けにマスクを販売する」などというアイデアを書き込んだ。
この呼び掛けに多くの関係者が賛同。区内のプランナーやデザイナー、メリヤス業者らが呼応して、3月下旬にはプロジェクトチームが発足した。小倉メリヤス製造所の小倉社長は「本音を言うと、仕事を確保できるのであればという思いもあった。主力のベビー服の受注が激減する中で、何とか生産を維持できたのはマスクプロジェクトへの参加があってのこと。4月はマスク製造で乗り切った」と話す。
マスクプロジェクトには、地元の町内会も呼応した。京島3丁目北町会は4月にメンバーが約400世帯に小倉メリヤス製のマスクを配布。5月には立花5丁目東町会も計250枚を配った。
一方、自社で販路開拓を進めているのが、地元で縫製業を営む1929年創業の「和興」(國分孝一社長)だ。同社は和紙素材100%の高級マスクを開発。國分博史専務は「3月末に発売したところ、生産能力を上回るほどの注文が来たため、現在は受注予約をいただいている」という。
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