コロナ解雇・雇い止めが簡単にはできない根拠 整理解雇4要件など法律的な観点から検証する

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【労働契約法19条】
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一  当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二  当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

このうち「有期労働契約の期間満了時に労働者が契約更新を期待することについて合理的理由が認められる」(労働契約法19条2号)か否かは、雇用の臨時性・常用性(仕事の内容が臨時的・補助的か、基幹的か)、更新の回数、雇用の通算期間、契約管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無等を総合考慮して判断される(平成24年基発0810第2号)。

要するに、正社員(期間の定めのない労働契約)の解雇の場合とは法律上の取り扱いが異なるが、契約時の事情や反復更新された経緯などによっては、解雇と同様に客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない雇い止めは許されないことになっている。

新型コロナウイルスを理由にしても

新型コロナウイルスによる企業経営上の業績悪化は確かに深刻な事態である。

しかし、だからといって安易な解雇が許されてよいことにはならない。

上の画像をクリックすると、「コロナショック」が波及する経済・社会・政治の動きを多面的にリポートした記事の一覧にジャンプします

厚生労働省も、新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)の中で

「今回の新型コロナウイルス感染症による影響への対応に当たっては、雇用調整助成金(本Q&Aの「3 雇用調整助成金の特例措置」をご参照ください)など、政府の支援策を活用いただき、できる限り労働者の雇用の維持に努めていただくようお願いします」

と、雇用調整助成金などを活用しながら可能な限り雇用の維持に努めるよう要請しているところである。

新型コロナウイルスの影響を理由とする解雇、雇い止めなどの労使紛争は、今後、増加することは必至である。

新型コロナウイルスの影響による業績悪化については、経営側に責任はまったくないことから、雇用を維持する責任を使用者側にのみ負担させることも相当でなく、政府の支援策のさらなる拡充が必須である。

そのうえで新型コロナウイルスの影響を理由とする安易な解雇、雇い止めがなされないように注視していく必要がある。

もし、労働者が、新型コロナウイルスの影響によって解雇や雇い止めにされてしまった場合は、簡単に諦めることなく労働組合(ユニオン)に相談、加入し団体交渉を通じて解雇の有効性を争うなどの対応ができることも併せて伝えておきたい。

戸舘 圭之 弁護士

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とだて よしゆき / Yoshiyuki Todate
弁護士(第二東京弁護士会所属)。「ブラック企業」問題に取り組む弁護士が結集したブラック企業被害対策弁護団の副代表をつとめるなど労働事件に積極的に取り組んでいる。その他、民事事件、家事事件など一般事件を広く手掛ける傍ら著名な冤罪事件「袴田事件」の弁護人としても活動するなど刑事事件にも力を入れている。戸舘圭之法律事務所(http://www.todatelaw.jp/
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