コロナ解雇・雇い止めが簡単にはできない根拠 整理解雇4要件など法律的な観点から検証する

✎ 1〜 ✎ 336 ✎ 337 ✎ 338 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

新型コロナウイルスによる経営不振を理由とする解雇は労働者には何ら解雇に値するような非違行為等はないことから、このような解雇は、整理解雇と呼ばれている。

整理解雇は、労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、もっぱら使用者の経営上の理由による解雇であることから通常の解雇以上に厳しく判断されなければならない。

整理解雇の4要件

そこで、判例上、以下の4要件(整理解雇4要件)が充足されなければ権利を濫用したものとして無効になると考えられている。

①人員削減の必要性の存在
②解雇回避努力を尽くしたこと
③人選の合理性
④手続の相当性(労働組合・当事者との協議)

整理解雇4要件の基本的な考え方は、整理解雇が企業の経営上、最終的な手段としてなされたものであるのか否かという観点から有効性を判断しようという点にある。

それでは、今回の新型コロナウイルスによる企業の業績悪化を理由とする解雇はこれらの要件を満たすと言えるのか。

①  人員削減の必要性の存在

整理解雇は、前述のとおり、労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではないこと、整理解雇によって労働者の被る経済的、精神的打撃は著しいものであることから、整理解雇は、解雇を正当化するに値する人員削減をする必要性がなければならない。

どの程度の経営上の必要性があればこの要件を満たすかについては、さまざまな見解があるが、整理解雇の場合、労働者に非がないこと、解雇によって被害を受ける労働者の権利を重視するのであれば「当該解雇を行わなければ企業の維持存続が危殆に瀕する程度に差し迫った必要性がある」場合でなければならないと考えるべきである(長崎地裁大村支部判決昭和50年12月24日労働判例242号14頁)。

このように考えた場合、今回の新型コロナウイルスによる企業の業績悪化が直ちに人員削減の必要性の要件を充足するかは慎重な検討が必要である。

もちろん、ケースバイケースであり一概には言えないが、現在、新型コロナウイルスによる業績悪化を契機に整理解雇を検討していたり、実際に整理解雇を行ったりした企業の全部が直ちに労働者を解雇しなければ企業の維持存続が危殆に瀕するほどにまで業績が悪化している企業ではないと思われる。

筆者が、実際に相談を受けているケースの中には、新型コロナウイルスの問題に便乗する形で労働者を解雇するケースもあり慎重な検討が必要である。

②  解雇回避努力を尽くしたこと

使用者は、人員削減をする必要性がある場合においても、解雇が労働者の雇用を喪失させる最後の手段である以上、配転、出向、一時帰休、希望退職の募集などのほかの手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務を負っており、ほかの手段を試みずにいきなり整理解雇の手段に出た場合は、解雇回避努力義務を尽くさなかった解雇として解雇権の濫用となる。

解雇回避手段は、いろいろ考えられるが、最低限、希望退職の募集はする必要があるといわれている。

よく見られる整理解雇のケースでは、希望退職の募集などほかの手段が行われた形跡はまったく見られないで解雇をいきなりしている例も多く注意が必要である。

次ページ人選の合理性、手続きの相当性は?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事