夏以降にコロナ「ワクチン」の成否は見えてくる 専門家会議キーマン・西浦教授が描く展望

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――無症状の人の一部も2次感染を生み出すような感染症は、ほかにもあったのですか。

インフルエンザも感染者の3~4割が無症状で、そこからも2次感染が生まれているという点では同じだ。だが、それに加えて新型コロナは高齢者を中心に致死率が比較的高い。結果、医療体制を維持するために社会として放置しておけないということになった、まれな事例だと考えている。

スペイン風邪との違いとしては、あの頃はインフルエンザで直接肺炎を起こして死亡するものではなかった。インフルエンザをこじらせた後に細菌性の肺炎が起きていたのが実態だとされる。

コロナウイルスに作用する治療法はまだない

今回の新型コロナがすごいのは、ウイルス性の両側肺炎を頻繁に起こしてしまうことだ。ウイルスに対する特異的な治療法ができない間は、感染を予防する以外に重症患者を防ぐために手の施しようがない状態だ。

西浦博(にしうら ひろし)/1977年、大阪府出身。北海道大学大学院医学研究院教授  。2002年、宮崎医科大学医学部卒業。ユトレヒト大学博士研究員、香港大学助理教授、東京大学准教授などを経て、2016年4月から現職。専門は、理論疫学(写真:本人提供)

一方で感染性について、1人の感染者が生み出す2次感染者数にそうとうなばらつきがあるという点はインフルエンザと異なる。「3密」のような屋内環境を避ければ、感染を防ぎうる感染症だ。ここは妥協せずに取り組み続ける必要がある。

――スマートフォンのアプリやGPSなどをもっと活用して行動制限の政策評価をするなど、まだまだ対策は進化できる感じがします。

われわれもコンタクトトレーシング(接触追跡)アプリや位置情報(GPS情報)を使わせてもらえないかと取り組んできたが、なかなか進んでいない。後者は特に、プライバシーの壁がある。

アプリのすごいところは、濃厚接触の履歴を保存し、感染者が出ると、リアルタイムにそのリストアップされた接触者を追えること。世界ではこの静かなイノベーションが起きているが、日本でなぜかスムーズに起こっていない状況だ。いまGPS情報を利用することも手段の1つとして考えてもらいたい。

それを実現するには、政治主導でトップの人が国民にしっかりとその必要性を語りかけることが大切だと思う。

――ところで国際比較上、日本人の新型コロナ感染者数や死亡数が少ないことについてはどうお考えですか。

遺伝的な原因を含めて、日本人は特に白人に比べて新型コロナウイルスの伝播が広がりにくく、重症化もしにくい。その証拠を今必死に探している。ただ、3月末には医療が相当に逼迫していて何もしなければ流行は拡大した可能性が高く、放っておけば感染拡大自体は起きてしまうだろうことは留意すべきだろう。

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