夏以降にコロナ「ワクチン」の成否は見えてくる 専門家会議キーマン・西浦教授が描く展望

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新型コロナは、それとは全然違う。今回警戒しているのは、人口全体へのインパクトと医療提供体制への負荷がそうとう大きなものになることだ。

スウェーデンの死亡を見ているとわかる。同国で記録した死亡者数は現在、約4000人。日本の人口に換算すると約5万人が死亡するのと同じだ。日本では社会として耐えられない状況ではないだろうか。

自然に集団免疫を獲得して一部亡くなってしまうことを許容するという選択は、心情的に日本では取れるのか、相当に厳しい議論を要する。

それくらいの人口インパクトを新型コロナは持っている。それに対するゲームチェンジャーに治療薬がなりうるかというと、明確にそうであるという根拠はまだない。

治療薬がゲームチェンジャーになりにくい理由

――治療薬についてもう少し詳しく教えてください。

コンビネーションセラピーといって、いくつかの抗ウイルス薬やほかの薬を重ねると、うまくいくかもしれないという研究は少しだけ出始めている。そこは希望が持てそうだ。ただ、それは重症の人が対象で、命が助かる確率が何%くらいよくなるという話だ。

ゲームチェンジャーになりえるとしたら、新型インフルエンザにおける「タミフル」のように、人口全体に広く行き渡るような早期治療によって、重症化そのものを抑制するものだ。日本の治療薬「アビガン」なども期待されたが、早期投与の効果で目覚ましいものはいまのところはなく、今後1年で出てくるメドは立っていない。

部分的な効果かもしれないが、ワクチンの登場のほうが早いだろう。フロントラインワーカー(最前線で働く医療従事者ら)に対する成果がこの夏を過ぎたころに出てくる。そうしたワクチンの効果がどれくらいかが大きな意味を持つだろう。

――夏を過ぎれば、ワクチンでどれくらいいけそうかがわかってくるということですか。

今のペースなら、いちばん早いDNAワクチンの臨床試験は、7~8月にスタートするだろう。おそらく医療従事者と施設の中にいる高齢者に対しては、臨床試験の段階からどんどんと接種が進むと思う。

ときに誤解も拡散されるオンラインニュースの時代。解説部コラムニスト7人がそれぞれの専門性を武器に事実やデータを掘り下げてわかりやすく解説する、東洋経済のブリーフィングサイト。画像をクリックするとサイトにジャンプします

一般の人にまで行き渡るのは、それより少し後ということになるだろう。臨床試験という形でかなりの数の医療従事者などが接種するという流れがおそらくできるのではないか。

――確実な効果を持つワクチンが出てくるかもしれない。

確実な効果というと、皆さんが想像されるのは、感染しないとか、あるいは感染しても症状が出ないということだと思う。しかし、実際のところは、そこまで効くことはまだ自明ではなくて、感染しても症状が軽微であるといった程度の場合も十分に想定しなければならない。でも、それでも人口全体へのインパクトは大きくなるだろう。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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