帰京が延びているのは、もちろん感染リスクを避けるためだ。
「これからの見通しが立たないことが漠然と不安。子どもの健康に関わる健診や予防接種、医療の診察などどうなるのかなって。1カ月健診のときでさえ、院内感染のリスクがあることが心配で……。出かける前からシミュレーションして、抱っこひもにケープをかける、手の消毒を取り出せるようにポケットにアルコールシートを入れ、院内での滞在時間もかからないように持ち物や先にできることはして行きました」
第1子で初めてのことばかりの中、「もっと簡単に妊婦さんや乳幼児に対して、どうしたらいいかわかる術があれば……と思います。とにかく子どもにだけは絶対に感染させたくないという気持ちで毎日を過ごしています」
実際、首都圏の自治体の多くで、5月末もしくは新型コロナ収束まで、保健センターで実施している乳幼児健診は中止・延期となっている。児童館も閉鎖され、離乳食教室も中止になるなど、情報を仕入れたり、相談したりする場もない。
東京都武蔵野市や千葉県成田市などでは乳幼児健診の対象月齢・年齢を延長。一部の月齢・年齢の健診を中止している東京都世田谷区では、健診が中止になり機会を失った人のために、小児科医監修による情報提供をホームページで行うなど、個別相談以外に対応策を講じている自治体もある。
乳幼児健診の重要性を訴える医師
オンラインで妊娠出産育児についての相談を受けている「じょさんしonline」には、コロナ流行前から変わらず、授乳や夜泣き、発達についての相談が多いそうだが、「健診に行けないが、どういうことに注意したほうがいいのか」「赤ちゃんはマスクができないが、外出するときの注意点は」などの質問も寄せられているという。
オンラインの特性を生かして、スマートフォンを使って赤ちゃんの状態確認することも。
「助産師なので診断はできないが、はいはいの状態や寝返りの練習など、いわゆる保健指導を行ったり、例えば乳児湿疹など、その時期特有のものなのか、病院に行ったほうがいいのか、どういったケアを行えばいいのかなどアドバイスしています」と代表の杉浦加菜子氏。
同社では、自治体の両親学級が中止になったことで、オンラインの両親学級の需要も急激に増えた。
武蔵小杉森のこどもクリニックでは、クリニックのある神奈川県川崎市の乳幼児集団健診(1歳6カ月児と3歳児健康診査)が延期になったことを受け、自費健診を広く受け付けている。
「大人とは違い、子どもは新型コロナ感染に対する不安もあるが、発達や発育が必要な時期。乳幼児健診は、身長や体重を測って、問題がないからそれで終わりと思っている人もいるかもしれませんが、その発育や発達をみる重要な機会であり、いろいろな相談を医師や保健師できる貴重なタイミング。また、重大な病気が見つかることも少なくありません。
今の状況で、集団健診が中止や延期になるのは仕方がないかもしれませんが、延期や未定というだけで情報が止まっていることが多いため、機会を奪われた人は不安が先行してしまう。自分で決めなければいけないこともプレッシャーになる。かかりつけ医なら日本小児科学会などの提言に沿った助言もできるので、気軽に相談してほしい」と同クリニック院長の大熊喜彰氏は言う。
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