「アフターコロナの世界経済は元には戻らない」 玉木元財務官が説く「新たな経済」の必要性

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玉木林太郎(たまき りんたろう)/1953年生まれ。1976年東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。財務省国際局長、財務官、OECD事務次長などを経て2017年10月から国際金融情報センター理事長(撮影:今井康一)

金融市場の投資家は年後半からの景気回復を前提に、とにかく足元の相場の流れに乗り遅れまいと短期主義で動いている。だが、5年、10年、20年先といった長い目で世の中を見ると、違った姿が浮かび上がってくる。景気が回復することは重要だが、もっと大事なのは、今回の危機を経て、世界経済が質的に大きく変わろうとしていることだ。今までの経済に戻ろうとしているわけではない。

従来のビジネスモデルが無効に

――どのような質的変化が見込まれますか。

例えば、ロックダウン(都市封鎖)が終わっても、かつてのような国際的な人の移動やインバウンド需要の復活は見込みづらい。アメリカからの出張者や中国からの旅行者がすぐに元の水準に戻ることはないだろう。また、テレビ会議などのテクノロジーを活用したテレワークが普及し、働き方や街の姿が大きく変化しているが、これもまったく元通りになることはないと思われる。

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経済活動の質的な変化によって、これまでのビジネスモデルの多くが無効になっていく。昔に戻ればいいという企業は脱落し、変化に対応して新たなビジネスモデルに転換できた企業が生き残る。そうした新陳代謝が激しくなっていくのではないか。

質的な変化は、地球規模の課題である「気候変動」との関係でも言える。コロナで得た教訓の1つは、公衆衛生の専門家の意見に世界が耳を傾けたということだ。気候変動の世界ではこれまで、国際的な専門家でつくるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による科学的知見と予見を基に議論がなされてきたが、世界はあまり真剣に耳を傾けないできた。

気候変動もパンデミックと同様、世界の全員にとって危機が終わらないと、終わったことにならない。コロナ危機を経て、気候変動に対する考え方にも変化が出てくるだろう。

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