「アフターコロナの世界経済は元には戻らない」 玉木元財務官が説く「新たな経済」の必要性

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――経済の質的変化の中で新陳代謝が激しくなるということですが、資金繰り支援や官民ファンドの立ち上げを含め、企業に対する公的支援の拡充が日本でも求められています。

私はOECDの事務局に在籍していた2013年に、各国企業の銀行借り入れに対する公的信用保証の比率を調べたが、日本は圧倒的に高かった。リーマンショック後に企業の倒産を防ごうと公的支援を強化したためだ。

それで倒産は減ったが、結果的に企業の新陳代謝が少なくなった。競争力を失った低賃金のビジネスやゾンビ企業の多くが生き残り、人材のシフトもあまり進まなかった。公的支援の拡充にはそうした弊害もある。

今回はリーマン時をはるかに上回る公的支援が行われようとしている。社会の安定のために公的支援は重要だが、単なる延命だけでは非効率を温存することになりかねない。今回はビジネスモデルを問う危機でもあり、公的支援を新たな将来の姿につなげていくことが必要だ。

気候変動と整合的な投資を

――公的支援を含めた巨額の財政出動は、将来の負担増となって国民に跳ね返ってくるという現実もあります。

未曾有の経済危機にある今は、財政規律や将来の負担増について語ることは適切ではないともいわれる。

しかし、将来に向けてビジネスモデルが変化していく中、財政支出も昔と同じような公共投資をしていては資金が無駄になるだけだ。欧州連合(EU)が推進する「欧州グリーンディール」のように、経済成長だけでなく、長期的な課題である気候変動とも整合的な投資を拡大していくことが求められる。

将来の負担増についてもしっかり語る必要がある。今回はリーマン時をはるかに上回る財政支出が見込まれる。危機が終息した後、積み上がった巨大な債務を誰がどう払うのか、誰が得をし、誰が救済され、誰がツケを払うのかという議論を避けることはできない。

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