SNS上に氾濫するウイルスのデマに対しては、ツイッターやフェイスブックなどは積極的に削除する方針をとってきました。しかし、それだけでは解決しない問題であると指摘するのは、アメリカ・ワシントン大学で、SNS上の情報の広がり方を研究するケイト・スターバード准教授です。
スターバード准教授が例に挙げたのは、マスクに関する情報です。アメリカで新型コロナウイルス対策を主導する疾病対策センター(CDC)は、4月初旬まで、「せきや発熱のある人以外はマスクを着用すべきではない」という指針を掲げていました。SNSのプラットフォームは、誤情報を排除し公的な情報を優先的に表示しようと、CDCなど公的機関による「症状がなければマスクは不要」という情報を多数掲載。市民の間には、症状がないのにマスクをつけることは非常識だ、という見方が広がりました。
しかし、症状のない人からの感染が明らかになるにつれ、マスクの有用性が見直され、結果的に「マスク推奨」の方針に大きく変わったのです。スターバード准教授は、今回のウイルスのように、不明なことが多く、公的な機関が発信する科学的な情報でさえ二転三転している中では、SNS空間を活発な議論の場になることが大事だと指摘します。
「ネットユーザーや一般市民が、政府や公的な保健機関の方針であっても疑問を持ち、市民や国民が議論できる状況にあることが大切です。これらのソーシャルメディアの誤情報取り締まりの方針が、市民による情報交換などの自由な議論を封殺しないよう、気をつけることが肝要です」
情報を見ないことも肝要
では、こうした情報爆発時代に、私たちはどのようなことを心がけたほうがいいのか。災害心理学が専門の、東京女子大学・広瀬弘忠名誉教授は、情報が不安を駆り立てている現状をもとに、情報摂取量を減らすことも大事だと指摘します。
「アメリカ疾病対策センターの出した提言では、コロナのニュースやSNSを見過ぎないほうが良いとしています。過剰に情報に接することは、たんに恐怖を増幅させるだけで、適切な行動にはつながっていきません。ウイルスとの闘いが長期化する中で、人々が不安や恐怖にうまく慣れていくこと、過剰でも過少でもなく、適度に恐れるということがこれから大事になってくると思います」
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