日本人は「休校長期化」の深刻さをわかってない 再開も遠隔教育もままならず格差が一段と拡大

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こういった状況においては、教育格差が拡大する。学校は再開しているか、効果的な遠隔教育を実施しているか、家庭で十分な学習支援を受けられるか、児童・生徒本人が自律的に学ぶことができるか――学校の違い、家庭の社会・経済・文化的背景の違い、本人の資質・能力の違いにより、教育格差は飛躍的に拡大してしまうのである。

全国規模の学習の遅れと教育格差の拡大は、どのような影響を社会や経済に及ぼすのだろうか。抽象的に語られることの多い話題だが、本稿ではデータを用いて実証的に論じることとしたい。

学力と経済には相関がある

OECDが、2000年から3年ごとに実施している、PISA(生徒の学習到達度調査)という国際テストがある。現在は70カ国以上が参加し、各国の15歳の生徒(日本では高校1年生)が受検する。科目は数学的リテラシー、科学的リテラシー、読解力。国別の順位が発表されるたびに話題になり、日本では学力低下論争の発端になったテストだ。「学力」の定義は国によって異なるが、PISAは特定の学力観に基づき、一律のモノサシで各国の「学力」を測定するテストなのである。

2015年、ジョージア工科大学のエリック・ディコラドらは、PISAの数学的リテラシーの国別平均得点と1人当たりGDP(国内総生産)に相関があるとの論文を発表した。その国の平均得点が高いほど、1人当たりGDPも高く、そこに一定の相関が見いだされるというのである。(Eric DiCorrado, Kayla Kelly & Malcolm Wright “The Relationship Between Mathematical Performance and GDP per Capita “, Georgia Institute of Technology 2015)

ただ、この分析では、PISAの科目のうち数学的リテラシーしか取り上げておらず、国情や地域特性など多様な国々のデータが混在するため、そこから読み取れることも限定的にならざるをえない。

筆者の共同研究者である、東京大学グローバルAI倫理コンソーシアムの石川光春客員研究員らが、PISAの全科目を取り上げ、国情や地域特性を踏まえて多角的にアプローチしたところ、ASEAN諸国および周辺の東アジア先進諸国のデータから興味深い分析結果が得られた。

(外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

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