日本人は「休校長期化」の深刻さをわかってない 再開も遠隔教育もままならず格差が一段と拡大

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そして、教育におけるICT機器の活用。ICT機器は遠隔教育に使えるだけではない。大規模な学習の遅れを取り戻すのにも有効である。例えば、1950年代のアメリカでは、戦争による教育の欠落、ソ連との宇宙開発競争で露呈した教育の遅滞を、「大量生産的に」回復するために、コンピューターによる学習支援システムの開発を開始している。ここから生まれたPLATOという学習支援システムは、1960年代から2006年まで使われていた。

現在の教育ICT機器は高度に発達しており、例えば家庭で勉強しているかどうか、間違いはないかどうかを、リアルタイムで「見守る」ことも可能である。要するに、児童・生徒がどこにいようと、その勉強をつねに監視・制御できるということだ。「学びのプライバシー」という倫理的問題はあるが、確実に勉強させるには効率的である。

勉強しているかどうか、つねに監視されるというのは、まるでパノプティコン(全展望監視型の牢獄)のようで、耐えがたいと思うかもしれない。だが、この非常時に個人の自律性を信じることが、はたして現実的かどうか。また、日本の教師が熱心で優秀であっても、教育現場は以前から人手不足に悩まされており、そこにコロナ禍が加わった状況で、児童・生徒を1人ひとり丁寧に見守り、学びに向けて奮起させることができるかどうか――。

日本の教育は危機に瀕し、経済は瀬戸際

ここまで極論を述べてきた。しかし、こういった議論が必要なほど、日本の教育は危機に瀕し、経済は「ASEANの滑り台」の瀬戸際にあることを認識しなければならない。

前述のとおり、韓国も、日本と同じく岐路に立たされている。しかし、在宅勤務や遠隔教育のインフラは、日本とは比較にならぬ高水準で整えられているし、児童・生徒の学習意欲は日本よりもはるかに高いことが各種調査で明らかになっている。(例えば、筆者も参画した調査として、ベネッセ教育総合研究所「学習基本調査・国際6都市調査〔2006年~2007年〕」などがある)

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このままだと、教育と経済の関連のみでいえば、「ASEANの滑り台」を滑り落ちる日本を尻目に、韓国は「成長のベルトコンベアー」を駆け上っていくことになるかもしれない。

政府も言っていることではあるが、まずは、家庭にあるスマートフォンでも何でもよいから、夏までにICT機器を利用した、教育インフラを整備すること。そのうえで、既存の制度や価値観にとらわれぬ議論ができるかどうかが肝要であろう。

北川 達夫 星槎大学客員教授

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きたがわ たつお / Tatsuo Kitagawa

1966年東京都生まれ。外務省経済局、欧亜局、在フィンランド日本国大使館在勤、在エストニア日本国大使館勤務ののち退官。OECD・PISA読解力調査専門委員、東京芸術文化評議会専門委員、横浜国立大学大学院工学府非常勤講師、日本教育大学院大学学校教育研究科客員教授などを経て、2017年より現職。

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