深刻な情報処理技術者の不足、社会基盤を支える人材の育成を急げ


将来描ける昇進モデルも必要

IPAでも、10校と提携し、文部科学省、経済産業省を巻き込んで人材育成のためのワーキンググループを設置している。教員の強化や、アカデミズムと産業界のギャップを埋め、即戦力を育成するための教材作成、カリキュラムの検討などを進めている。だが、スタートしたのは2008年10月で、まだまだ緒に就いたばかり。

何人の人間が何カ月で完成させる仕事か、というときに「人月」という単位があるほど労働集約的で、しかも専門知識を要する仕事であるにもかかわらず、専門教育を受けた人材の採用が難しい。文系を含めた情報系以外の学生を採用せざるをえず、企業自身が人材育成を行わなければならない。オペレーター、プログラマーを経てSEになるのに最低でも3~5年はかかる。キャリアを積んでも専門化すればするほど、スペシャリストにはなれるが一定以上の昇進が難しい。一般企業ではなおさらだ。いったんシステムの専門家と見なされると通常の昇進ラインから外れてしまう。

しかし、米国のコンサルティング会社、ガートナーは、「情報システムは企業活動にとって、インフラ=コストという認識では不足、IT戦略はビジネス戦略そのもの」という。そのためにも、経営ボードに情報システムの専門家(CIO)を置くべき、と提唱する。ボードメンバーにIT担当者を置くことにより、社内での昇進等、先行きの見えなかったIT部門の人材にとってモラール向上にもつながる。

情報産業自身も処遇の見直しを進めている。ラインの昇進とは別に、スペシャリストのランク付けを行い、課長級、部長級の待遇を約束するなど、ここ数年、優秀な人材の育成と確保に努める。専業大手、伊藤忠テクノソリューションズには、入社6年目で本部長クラス待遇のスペシャリストもいる。

現時点では下請け的なイメージの中国やインドだが、キャッチアップの勢いはすさまじい。遠からず立場が逆転するかもしれない、とある業界関係者は危機感を漏らす。IPAでは、情報処理技術者試験に加え、09年度から「ITパスポート試験」を開始した。これにより国民全体のITの基礎的な水準アップを図りたいというが、浸透には時間がかかる。現政権には、高校無料化のようなバラまきのための予算縮減に汲々とするのではなく、日本経済の長期的な成長戦略に基づく予算配分を望みたい。
 
(小長洋子 =週刊東洋経済)
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