第2に、「緊急融資の不良債権化」です。今回の緊急融資、とくに無担保融資に殺到するのは、すでに借入金が多いため取引金融機関からの借り増しが難しく、資金繰りに困窮している企業でしょう。イコール、経営が苦しく、信用度が低い企業です。
こうした企業に融資を拡大すると、やがて大量の不良債権が発生するのは、少し性格が違いますが過去のバブルで何度も経験済み。今回の緊急融資も、相当な部分が不良債権化することでしょう。
1990年代、日本は不良債権処理に手間取り、長期の停滞に陥りました。現在、不良債権に対するセイフティネットは、当時と比べて格段に充実しています。それでも不良債権問題が浮上すれば、体力が弱い地方の金融機関を中心に甚大な影響が出ると懸念されます(「『地方銀行の崩壊』コロナが映す暗い未来予想図」参照)。
「経済の構造改革」阻害する危険も
第3に、経済の構造改革を遅らせてしまうことです。グローバル化・IT化の流れに乗り遅れた日本は、すでに1人当たりGDPなどの指標で先進国の座から転落しており、抜本的な構造改革を迫られています。
厳しい言い方になりますが、構造改革に対応できない企業には、退場してもらうしかありません。「すべてを救え!」の政策は、本来なら市場から退出するべき企業を温存し、構造改革を阻害してしまう危険性があるのです。
なお、すべての企業を救おう、融資が不良債権になったら銀行も救おう、となると、財政支出が膨らみ、国の財政悪化=将来の増税が問題になります。これが「すべてを救え!」という政策の最大の問題かもしれません。
ただ、「借金による財政支出の拡大は何ら問題ない」とするMMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)も支持を集めており、限られた紙幅では議論の収拾がつかないので、今後議論が深まることを期待し、ここでは割愛します。
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