「倒産ドミノ」回避後に迫る景気後退の超危険 すべての企業を救う「しわ寄せ」は国民に行く

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「すべてを救え!」という政策の副作用・問題点に、どう対応すればよいのでしょうか。すでに大々的に支援施策が展開されている中、今後、以下のような対応が必要です。

1:追加の資金繰り支援は、原則として行わない。行う場合は、厳格に審査を行い、事業に将来性があり、経営悪化が一時的だと認められる企業に限定して支援する。

2:すでに実行した融資・給付金の使い道や支援企業の経営状態をチェックし、経営指導を行う。不正には厳正に対処する。国・自治体は人手・人材の不足で十分なチェック・指導をできないので、中小企業診断士など民間の専門家を活用する。

3:売り上げ回復で倒産を減らすことを目指して、経済活動を本格的に再開する(感染リスクには留意する)。そのために、販路開拓・新サービス創造といった前向きな事業活動を支援する。

デメリットは数年後に表面化する

この問題が悩ましいのは、政策のメリットとデメリットに時間差があることです。「すべてを救え!」の政策は、倒産を減らすのに即効性がある一方、当面、問題は発生しません。短期的にはメリットだけです。

不良債権の発生、構造改革の遅れ、財政問題=増税といったデメリットは、この先2~10年という中長期的に表面化し、深刻化します。

今日この日を生きるわれわれ国民は、長期的なことをなかなか考えられません。情報や専門知識の制約もあります。どうしても目前にある短期的なメリットに着目し、「すべてを救え!」の政策を支持しがちです。ここは政治がリーダーシップを発揮し、短期のメリットの享受と長期のデメリットの克服をバランスさせることを期待しましょう。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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