そのトヨタが今、もっとも恐れているのは、日本からアメリカに輸出する完成車に対する関税引き上げだ。
トランプ大統領はその可能性をちらつかせながら、日本の乗用車メーカーにアメリカ国内での投資や雇用拡大を求めてきた。大統領選再選を目指すトランプ氏が、票集めのために切り札を突きつけてくる可能性も否定はできない。
トランプ大統領に恩を売った?
トヨタを例にとると、2019年のアメリカ新車販売238万台のうち、31%に相当する75万台が日本からの輸出車だ。レクサスに限れば、日本での生産比率は50%を超える。
現在、対米輸出車に課せられている関税は一般の乗用車で2.5%(ピックアップトラックは25%)。この関税が大幅に引き上げられれば、価格に転嫁せざるを得ず、ドル箱のアメリカ市場で競争力が削がれるのは必至だ。
前出のトヨタ系自動車部品メーカー社長は、「トヨタにとって、関税引き上げだけは何としてでも回避したい。アメリカでの競争力も国内生産も両方守りたい。だから先々のことを考え、操業再開を急いでトランプ大統領に恩を売ったのではないか」と話す。
トヨタグループは年間1000万台以上を販売し、その規模は世界2位。これほど存在感の大きな企業が海外で円滑に事業を展開するには、現地で敵視されないような立ち振る舞いや、政権との良好な関係が求められる。経営上、極めて重要な市場であればなおさらだ。
今回、アメリカで先陣を切って工場の操業再開に踏み切った姿からは、巨大なグローバル企業のトヨタだからこその深謀遠慮が垣間見える。
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