トヨタがアメリカ再始動で先陣切った深い事情 約50日ぶり稼働、コロナ禍からの回復に道筋

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自動車産業に詳しいコンサルティング会社、アーサー・ディ・リトル・ジャパンの鈴木裕人パートナーは、「コロナ禍から回復局面の自動車販売はメーカーのブランド力が物を言う。(ブランド力のある)トヨタにとっては、アメリカでさらにシェアを上げるチャンスだ」と指摘する。その商機を逃さないためにも、現地生産を早期に再開して、新車を安定供給できる体制に戻しておくことが不可欠だった。

ただ、稼働を再開した工場でも、最初の週は生産ラインのチェックや部品在庫の確認など準備作業が主で、本格的な自動車の生産は18日の週からとなりそうだ。工場の操業度は当面、50%程度の低い水準が続く見込み。まだ休止中の工場も早期に生産活動を再開し、全米の新車需要の回復度合いや、メキシコで生産する部品の供給体制などを勘案しながら、徐々に稼働率を引き上げていく考えだ。

国内工場の操業維持にも不可欠

アメリカの自動車産業の中で先陣を切って、生産活動再開に踏み切ったトヨタ。その経営判断の背景には、ほかにも2つの大きな理由がある。1つは日本国内の生産との関係だ。

トヨタの2019年の国内生産実績は340万台で、そのうちの6割強が海外への輸出車だ。しかし、世界的な感染拡大で、最大の輸出先であるアメリカを始めとする海外主要市場の新車需要が激減。さらに日本での需要も大幅に落ち込み始めたため、4月に入ってから国内の工場は大規模な減産を強いられている。6月までの減産規模は24万台を超える見通しだ。

トヨタはかねて「国内生産300万台体制の死守」を掲げ、自社だけでなくサプライチェーン(部品供給網)における雇用や技術を保持することを経営の軸に据えてきた。5月12日に開いた2019年度の決算説明会でも、豊田章男社長は「国内生産はグローバルトヨタの基盤。(これまで300万台体制を)石にかじりついて守り抜いてきた」と強調した。しかし、今年度はコロナ禍でその死守が危うい状況だ。

そこで焦点になるのは最大の仕向地であるアメリカへの輸出だが、現地生産よりも輸出を優先するわけにはいかない。というのも、アメリカ国内にある工場が止まっている状態で、日本から完成車をどんどん輸出すれば、現地で反感を買うのが目に見えている。つまり、国内工場の減産を緩和し操業度を引き上げるためにも、まずアメリカの現地工場を再開する必要があったのだ。

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