コロナ乗り越えた男が創る日本営業大学の船出 中田仁之学長が開拓する元プロ選手達の未来

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プロ野球選手は屈強で体力がある上に、学校や先輩後輩の広いネットワークをもっている。また近年は、球団が社会人としての教育を行うので、人材として優秀だとみる企業が増えているのだ。

特に保険会社、警備会社など体力や行動力が必要だったり、規律を重視したり、広い人脈がある方が有利な会社にとっては、元プロ野球選手への期待が高まっていた。またスポーツビジネス関連でも、元プロ野球選手をスカウトする企業は多い。

少し前まで、元プロ野球選手は「潰しが利かない」と言われた。年功序列、終身雇用の企業では、途中入社はそもそも難しかった。それに「スポーツ以外知らない元選手」は、仕事を仕込むのが難しいと敬遠された。

そのために元プロ野球選手は、野球指導者になるか、飲食業の店を持つしかないと言われた時期もあった。

しかし、少子化によって人材確保が厳しくなったうえに、NPB球団がコンプライアンス対策もあって選手の教育に力を入れるようになり、状況は大きく変わったのだ。端的に言えば、近年は、元プロ野球選手は選り好みさえしなければ、それなりの企業に就職できるようになった。

とはいえ、元プロ野球選手のセカンドキャリアの悩みがなくなったわけではない。

第一期生となった元プロ野球選手の声

日本営業大学の第一期受講生の元日本ハム・森本龍弥は、「就きたい職種がないのでまだ自分探しだ」と言う。引退までに心の準備をすることができず、野球以外の適性を見つけることができなかった。そのまま就職することにためらいを感じて、受講することにしたという。

同じ第一期受講生となった元日本ハム・森山恵佑も「何の知識も持たずに、今まで知らなかった社会に出ることを躊躇するようになった」と語った。

ただ単に「飯を食う」ことだけを考えれば、今のプロ野球選手のセカンドキャリアは、以前よりも改善されている。前述のように20代、30代前半の元アスリートを欲しがる企業は、たくさんある。

しかし、就職後に不適応に悩むケースが少なからずある。ときには離職してしまうこともある。よく聞くのは「一般企業は無理、やっぱり野球指導者になっておけばよかった」と言う声だ。回り道をして学生野球資格回復を目指すケースも多い。

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