「イタリア人にとって、パンは食べるということの象徴。世界大戦の時にパンが配給制になった苦労話を祖父母から聞いて育った世代は、今、パンを作り、触っていることで安心感を得ているんじゃないかな」と彼女。粉を買って自作するほうが、家計費を安く抑えられるという現実もあるかもしれない。
帰宅すると、買ってきたものの除菌作業が面倒くさい。でも最近ではコロナライフも達人の域に達した私、ショッパーからすぐに使うもの、冷蔵庫へ入れなければダメなものだけを出し、消毒用アルコールをキッチンペーパーに染み込ませてパッケージを1つずつ拭いている。残りはショッパーごとテラスの日陰に3日ほど放置する。プラスティックは72時間、厚紙なら24時間経てばウイルスが消滅するそうだから、消毒の手間が省けるうえに、消毒液などの節約にもなる。
そしてスーパーに入店した時点からはめっぱなしの使い捨て手袋をしたまま、手洗いを徹底的にする。干しておけば、何度か使うことができるからだ。ロックダウン初期から今まで、スーパーに消毒液の類は姿を消したままだ。買い置きしてあったこのアルコールがなくなったら、ほかの方法を考えないといけない。
いよいよ美術館や飲食店が営業再開
いよいよ5月18日からはイタリア全国でブティックや美術館、飲食店、美容院などが次々と営業を再開する。「友達」とも会っていいことになるから、ほぼ元通りの生活が帰ってくることになる。
でも油断をすれば再び感染が増えてしまう可能性も否めないので、各業態でさまざまな工夫が検討されている。
飲食店ではテーブル同士の間を広く開け、透明板の仕切りをつけたりして、飛沫感染を防ぐ。バスやトラムなども乗車人数を制限する。トリノのある書店では、入り口と出口を分けて客同士がすれ違わないようにしたり、客が手にとって見た本はすべて除菌処置をするそうだ。そしてイタリアの夏といえばバカンス、バカンスといえば海!のビーチリゾートは、パラソルとパラソルの間を5メートル開け、時間制限付きで海に入る、などを検討中ということ。
ちょっとイビツになってしまったものの、イタリアの人たちはこうして元の暮らしを取り戻した。でも観光客が戻ってくるのはいつのことだろう。ミラノの高級ブティックもフィレンツェのアートミュージアムも、ピエモンテのワインツーリズムも、イタリア人客だけで潤すことはできないのをみんな知っている。ソーシャルディスタンスを保つために、以前のようには客を入れることができなくなる多くのレストランや商店が、倒産していくだろうという予測もある。貧困問題が加速した地域では、生活に苦しむ人たちにマフィアの手が伸びているという報道もある。フェーズ2と呼ばれるこれからの暮らしには、厳しい現実が待ち構えているのだ。
でも私は、イタリア人たちはきっと、粘り強く乗り越えていくだろうと思っている。ヨーロッパ列強からの支配につねに苦しめられてきた歴史を持ち、政治家は議論ばかりしていつも混乱している(今回のコロナ禍でも、たくさんの経済援助策が打ち出されたが、実現したものは少ない)。そんな国に住む人たちだから、何かが起きたときには「自分でなんとかする」能力にとても長けているのだ。
毎日毎日たくさんの人が死に、怖くてつらい日々の中でも、「ANDRA' TUTTO BENE(アンダラ・トゥット・ベーネ)」(すべてうまくいくよ)と言い続け、自分もまわりも励まして乗り越えたように、フェーズ2の困難も笑い飛ばしながら乗り越えて行ってほしい。
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