「ワクチン不要論」信じる人があまりに危険な訳 誰が「ワクチンは危険!」と吹聴するのか?

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それにしても、世界中で麻疹が急速に広まったのはなぜでしょうか。この疑問に答える前に見てほしいのが、次ページの図です。イギリスのガーディアン紙のWEB版に掲載された「子どもがワクチンを受けたときとそうでないとき、麻疹ウイルスがどのように広まっていくか」という動画(※1)を参考に、私が作成したより簡単なイラストです。

(図:『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』より)

集団内に抗体を持った人が少ないほど病気が広がり、逆に増えれば増えるほどその病気が流行しにくくなるということが、おわかりいただけると思います。

麻疹のウイルスは感染力が強いのが特徴です。冬になると大流行するインフルエンザは1人の感染者が抗体のない1.4〜4人にうつす可能性がありますが、麻疹は1人の感染者が抗体のない12〜18人にうつす可能性があります。

インフルエンザは飛沫感染、つまり咳やくしゃみとともに口から出る細かい水滴(飛沫)がウイルスを運びますが、麻疹は飛沫、接触以外に空気感染もするので、同室にいるだけで感染する危険性があります。

ワクチンの意義

上の図のように、MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)を打っている人が多いほど感染を防げる確率が高まるのです。これを“群れ免疫”といいます。麻疹は感染力が高いため、十分に抗体を持っている人の人数が多くないと広まってしまう病気なのです。

『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫 』(内外出版社)書影をクリックするとAmazonにジャンプします。

日本も、麻疹の抗体を持つ人が十分に多くはありません。これは集団として麻疹に弱いということ。結果、国外から持ち込まれたウイルスによって年間に200〜500人もが感染する状態が続いています。2019年には麻疹の患者数は年間744人でした。そのうちワクチンの未接種が26%、1回のみ接種が22%、2回接種14%、不明が38%でした(※2)。

2006年、MRワクチンの定期予防接種が1歳で1回目、5〜6歳で2回目を受けるという方式に変わり、対象年齢への接種率は95%以上となりました(※3)。上の図でいうと、いちばん下にあたるので、十分に感染予防のできる割合だといえます。

けれども、感染源になるのは、それ以前の予防接種の方式で受けていた人たちであることが多いのです。そのため麻疹が周囲で流行しているときなどは、1歳未満でもMRワクチンを接種することがあります。ただし、生後6か月以前の子は、お母さんからもらった免疫の影響で、十分に抗体ができないことがあります。その場合、1歳になったら忘れずに再び1回目の接種を受けてもらうことになります。

なお、こうしたワクチンのある感染症は、特別な治療法はないことがほとんどです。治療法がないからこそ、ワクチンが開発されたことも知っておいてください。

ワクチンについてもっと詳しく知りたい方は、私と小児科専門医の宮原篤氏との共著書『小児科医パパとママのやさしい予防接種BOOK』をぜひご一読ください。ワクチンの歴史から、各成分や副反応のことまで詳しくわかりやすく書いています。

※1 The Guardian「Watch how the measles outbreak spreads when kids get vaccinated – and when they don't」https://www. theguardian.com/society/ng-interactive/2015/feb/05/-sp-watch-how-measles-outbreak-spreads-when-kids-get-vaccinated
※2 厚生労働省「麻しん風しん接種状況」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/dl/190821-01.pdf
※3 国立感染症研究所「年齢/年齢群別の麻疹予防接種状況 2017年」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/7924-measles-
yosoku-vaccine2017.html
森戸 やすみ 小児科専門医

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もりと やすみ / Yasumi Morito

1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、2020年6月1日、東京都台東区に『どうかん山こどもクリニック』を開業予定。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。

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