「ワクチン不要論」信じる人があまりに危険な訳 誰が「ワクチンは危険!」と吹聴するのか?
以上のような話をすると、その保護者は驚かれていました。感染症にかかったことで起こり得るリスク、それを予防するためにワクチンがあること、深刻な後遺症が残るかもしれないことを理解したうえで「打ちたくない」という考えになったわけではないようでした。最後に、「本を読んだら、ワクチンは有害だし、いらないものだと書いてあったんです」と教えてくれました。
感染症にかかると、どんな症状や合併症が起こり、それをワクチンがどう防ぐかを知るよりも先に、「ワクチンは危険!」ということだけを勉強してしまう……、これもこの保護者だけの責任ではないと思います。ワクチンの利点は書かず、危険性だけを強調するという、偏見に基づいて書かれているとしか思えない本が実際にたくさんあるからです。
ワクチンが発明された歴史背景
じつは「ワクチンって怖い」という誤解が広まっているのは、日本だけではなく世界中で見られる現象です。
歴史をふり返ると、人類が感染症に対抗する手段をあまり持たなかった時代、人々はその病気になる怖さをよく知っていました。いったん感染してしまうと命にかかわる病気が、現代よりもたくさんあったのです。だからこそ、ワクチンの発明と普及はとても喜ばしいものでした。
しかしそこから時代が進んで、ワクチンだけでなく、公衆衛生や医療の発展によって感染症が劇的に減ると、感染症にかかる人、感染症によって命を落とす人を目にすることが少なくなります。すると、次のような段階を踏むことになるといわれています。
②ワクチンへの不信感や恐怖が大きくなる
③感染症の知識や経験のない人たちのあいだで予防接種率が下がる
現在、③の段階にある国が多く、日本もそのひとつです。
麻疹を例にあげましょう。日本では麻疹の感染者は減り、若手の医師だと診たことがないという人も多いのが現状です。そこで、2015年3月にWHOは、麻疹は日本において「排除状態」にあると認定しました。
しかし、2019年からは麻疹の報告が相次いでいます。根絶目前だった麻疹が再興してしまったのです。日本だけでなく、アメリカ、ブラジル、ウクライナ、イタリアなど、いたるところで麻疹が再び流行して問題になっています。
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