陽性率などの数値がどうなれば、緊急事態宣言を緩和するのか。
5月14日現在、日本政府は明確な基準を示していない。そうしたなか、大阪府は5月5日に暫定的な「大阪モデル」を発表し、緩和基準の一つとして「確定診断検査における陽性率が7日間平均で7%未満になること」を掲げた。
濱岡教授は言う。
「韓国で最大が6%だったことを考えると、大阪府の条件は緩い印象を受けます。そして大阪府の数字も、府の対策本部専門家会議座長が確実なエビデンスがあるわけではないと発言しているとおり、根拠はあいまいだと感じます」
実際、府の担当者は取材に対し「いろんなデータが十分に積み上がった状況ではない」と言い、状況に応じて見直すこともあると説明している。
日本のデータ「母数が変化」 状況把握が難しく
結局、日本の現状はデータから適切に把握できるのか。
厚生労働省の公表データには注釈が多く、これまでには数字の修正も再三あった。5月9日には集計方法も変更。都道府県からの報告をまとめる方式だったのに、この日以降は都道府県のホームページに記載された公表情報を集計する形になった。また、PCR検査を受けにくいとの批判を受けて検査の目安を変更。「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている」という記述も削除した。
こうした実態を踏まえ、濱岡教授は「日本では陽性率を算出するときの母数である検査数や検査の方法が変動しているので、傾向を正しく判断することは今も難しい」と言い切った。
「季節性インフルエンザの場合は、検査キットが普及し、安定した検査体制ができているので、定点観測のために指定されている病院からの報告を集計すれば傾向を把握でき、『注意報』を出せます。ところが、新型コロナの場合は、これまでの検査では対応できないため、検査体制の構築から始める必要があり、時間とともに検出できる感染者数が変化してしまいます」
「陽性率を緊急事態宣言の解除に向けた判断基準として用いるならば、検査体制を迅速に整備することが必要です。それはWHOが繰り返し指摘している検査拡充と感染者の隔離という感染症対策の前提とも重なります」
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