コロナDVを断ち切るための離婚との向き合い方 アフターコロナ時代の家族のあり方とは?

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2009〜2018年の10年間の婚姻届と離婚届で計算すると、婚姻649万2500件、離婚229万3083件で35.3%でした。ちなみに、2000〜2018年で計算してみても、36%となっています。つまり、話は1周して、やはり3組に1組以上は離婚している、ということが言えると思います。

今の時代に結婚はリスクなのか

3組に1組以上が離婚している日本。しかし、「離婚=リスクと直結する思考にも、リスクが潜んでいる」という視点も持っておいていただきたいと思います。

マスメディアなどでは、前回記事でご紹介した「再婚増加のエビデンス」よりも、よりキャッチーな「離婚の急増」ばかりが取り上げられやすい状況です。その結果、「結婚はリスク。だって離婚が増加しているからね」といった、結婚に対するリスク意識が助長されやすい傾向があります。

しかし、離婚が増加したことによって、前回ご紹介した「再婚が婚姻全体の4組に1組を超える勢いで増加している」という統計的事実があることも、意識していただきたいと思います。

つらい別れがあってこその出会い、が増えています。筆者の知人の中に、幸せな再婚を初婚男性との間に果たした女性がいますが、元夫との離婚理由は入院レベルのDVでした。その女性が「幼い子を抱えての離婚の決断には、結婚の時の5倍の意志の力が必要だった」と語っています。

離婚にはこのように大きな痛みが伴うケースがありますが、3組に1組以上という高い発生状況にある離婚を背景として、4組に1組を超えるリスタートカップルが生まれ、新たな家族を形成しているのです。

データからは、まだ再婚が10組に1組程度だった1970年代の状況のままの価値観で、ましてや、25年前の紙戸籍時代を引きずって、離婚をバツと唱え、「離婚=結婚生活の終わり」ましてや「家族形成の終焉」と断じることは決してならないといえます。

アフターコロナ時代の“二人”を考えるならば、「離婚が増えているというけれども、それがあってこその幸せをつかむ『リスタート婚』も増加しているんだね」と、離婚への前向きな解釈の重要性が高まっている、という視点が大切だと感じています。

天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー

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あまの かなこ / Kanako Amano

東京大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。1995年日本生命保険相互会社入社、99年より同社シンクタンクに出向。専門分野は人口動態に関する社会の諸問題。総務省「令和7年国勢調査有識者会議」構成員等、政府・地方自治体・法人会等の人口関連施策アドバイザーを務める。エビデンスに基づく人口問題(少子化対策・地方創生・共同参画・ライフデザイン)講演実績多数。著書に『未婚化する日本』(白秋社・監修)、『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)等。

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