テレビに「結論ありき」が跋扈する悲しい事情

なぜ都合の良いコメントだけを切り取るのか

逆に専門家の側から見ると、「情報番組に出演できるかどうか」のポイントは、専門性の高さに加えて、そんな制作サイドの意向に沿ったコメントができるかどうか。私は「情報番組に関わってひどい目に遭った」という専門家を10人以上知っていますが、彼らは主に「あまり出たことがない」という不慣れな人か、「ここは譲れない」という主張の強い人のどちらかです。

そもそも情報番組に限らずテレビ番組のコメント収録では、雑誌やネットメディアのように発言を確認することはほぼ不可能。さらに、数十分間に渡ってコメントしたことが数十秒、短ければ10秒程度に縮められて放送され、しかも、どの部分が使われるかはわからないのです。

なかには誘導的な質問もあり、その回答が使われる可能性は高く、似た質問が繰り返されると「正解をください」と促されているような感覚が否めません。それらをよしとしない専門家は「ひどい目に遭わされた」と感じ、さほど主張がなく番組出演に慣れている専門家は「甘んじて受け入れている」という傾向があるのです。

ゆえに、自分の言いたいことが必ず放送されるわけではなく、その点で澁谷さんはFacebookに「医療者のプロフェッショナルとしての気概だけで現場を回すのには限界があると思い、そういった部分に行政などからサポートを入れて欲しいと強くコメントさせていただきましたが、全てカットになってしまい本当に悲しい限りです」と書いていたようにピュア過ぎたのかもしれません。

プロセスの検証と再発防止策が必要

そして、もう1つ忘れてはいけないのは、批判を受けたときの対応が不十分だったこと。

「グッド!モーニング」は、澁谷さんの書き込みから5日後の放送でようやく対応しましたが、「単に取材時のコメントを放送しただけ」に留まりました。これでは澁谷さんの批判を封じるために行ったものにすぎず、「目先のクレーム対応」と言われても仕方がありません。

謝罪しなければいけないことが起きてしまったら、「なぜこの問題が起きたか」というプロセスを検証して再発防止に努めるのが、組織としては当然の対応。それをしなければ、原因や改善方法がわからず、近い将来同じことが起きる可能性が高く、視聴者にも「形だけ謝っている」と思われても仕方がありません。

次ページ「批判された人にだけ対応すること」が世間に知れ渡った
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