テレビに「結論ありき」が跋扈する悲しい事情 なぜ都合の良いコメントだけを切り取るのか

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さらにダメージが大きいのは、「批判された人にだけ対応することが番組や局のやり方」というリカバリー方法が世間に知れ渡ってしまったこと。クレームは対応の誠実さによって、むしろ信頼を寄せられるか、不信感を募らせるか紙一重だけに、今回の件で番組や局のイメージダウンは避けられないでしょう。

一方、「グッとラック!」はこれといった釈明がなく、スルーの状態。ネット上の批判を気にせずに放送していますが、これでは「反省すべきことはない」と言っているようなもの。情報番組としての姿勢を問われるとともに、上地雄輔さんや上地さんのファンに対して不誠実。さらに言えば、番組の情報を信じて毎日見ている視聴者に疑念を抱かせたままでいることは得策とは思えません。

今回の対応は両番組のみならず、情報番組やテレビそのものへのイメージダウンにつながりかねないものでした。やはり人々の生活に関わる情報を届ける番組である以上、問題が発生したときは番組の責任者が速やかに対応するのが望ましいでしょう。

制作側のモラルとガバナンスの低下

2つの騒動では、ネット上に「偏向報道」というフレーズが飛び交っていました。偏向報道とは、メディアが恣意的に情報を編集し、それに沿わないものを排除して報じること。

ただ、最近の問題を見続けていると、「利益や保身のために自分たちの主張を通す。特定集団を守り、そこに対抗する人々を攻める」という闇の部分以上に、「制作サイドのモラルとガバナンスの低下」という寂しい現状が浮かび上がってきます。

特に現在は、新型コロナウイルスの徹底した感染対策や、難しい話題を連日扱い続ける重苦しさで、制作現場はかつてないほど疲弊。本来、情報番組がするべきプロセスを踏まず、「これまで以上に“結論ありき”で動きたくなってしまう。こんなに大変だから、これくらいは許してほしい」という心理状態が推察されるのです。

さらに、偏向報道と見なされやすい理由として見逃せないのは、「上司や取引先の顔色をうかがい、評価を気にする」こと。どの業界や企業でも、全体の流れや上司の意向に沿うものをスピーディーに用意できる社員は評価が高く、かわいがられますが、情報番組の制作現場でもまったく同じことが当てはまるのです。

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