テレビに「結論ありき」が跋扈する悲しい事情 なぜ都合の良いコメントだけを切り取るのか

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そういうときは必ず「生放送で時間がないからほしいコメントは決まっていますよね」「だからもう流れが決まっているんですか?」などと理解を示しつつ探りを入れるようにしていますが、すると大半のディレクターたちは「そうなんですよ」「すいません」などと正直に話してくれます。彼らの上にはプロデューサーやチーフディレクターなどがいて、その指示に沿って動いていることも、その言動に影響を与えているのでしょう。

下記、実体験と取材をもとに、彼らの心境を挙げていくと、

「会議の決定や仮台本に『極力これでいきたい』という流れがある」→「だから、そういうコメントをもらいたいし、もらえる人を探している」

「生放送だから時間内に収めなければいけない」→「だから、必要なコメントだけをコンパクトにもらいたいし、それ以外は使わない」

「取材したからには多少なりとも使わなければいけない」→「だから、最初にほしいコメントがもらえるかを尋ねて無駄をなくしたい(使えないコメントには報酬を払いにくい)」

「他の専門家に当たっている時間と労力がない」→「だから、こちらの意図を汲んでくれる物わかりのいい人がいると助かる」

制作側の事情優先で甘えも感じてしまう

“結論ありき”になりがちな理由には、放送内容だけでなく、取材時間の短さと人員の少なさ、各コーナーの尺(放送時間)、縦の人間関係などが挙げられますが、いずれも制作側の事情。残念ながら「これくらいは協力してもらえますよね」という甘えを感じてしまうことがありますし、専門家たちの間では、「『協力してもらっている』のではなく、いまだに『番組に出たらメリットもあるだろう』という上から目線の人がいる」という話も出ます。

そうした意識は制作サイドだけでなく出演者たちにも共有されているため、番組の放送中も空気を読んで“結論ありき”のコメントをしがちになり、良く言えば協調性がある、悪く言えばイエスマンぞろい。生放送だからこそ、時間通りの進行に計算が立つコメンテーターや専門家が重宝されますし、情報番組の出演者が似た顔ぶれになりがちなのはこんな背景があるのです。

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