テレビに「結論ありき」が跋扈する悲しい事情 なぜ都合の良いコメントだけを切り取るのか

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実際、「上司の意向に沿う形で制作を進めて査定を上げよう」とするディレクターや、「取引先である番組の意向に沿ったコメントをすることで良好な関係を築こう」とする出演者の存在が、今回のような問題につながってしまうところはあるでしょう。当然ながらそうなってしまうと、公正中立な姿勢で報じることはできなくなってしまいます。

信頼を得るために大切な4つの指針

今後、両番組に限らずテレビの情報番組が信頼を得ていくために大切なのは、「事実ベースの情報を軸に番組を進めていくこと」「1つに偏らず異なる見解を見せること」「不安をあおるような構成・演出を抑えること」「批判を効果的なショーアップと考えないこと」の4点。ただ、これらはいずれも視聴率を獲得しづらいことだけに、「制作サイドが実践できるか」と言えば疑問が残ります。

しかし、情報番組の役割は、公正中立な立場から視聴者にさまざまな情報を提供して、思考の機会を与え、判断・行動するうえでの参考材料にしてもらうこと。その役割に立ち返るためには、しばしば視聴者から指摘されるような「事実を追求するというより、報じたいことを事実にするための材料を集めている」という制作姿勢のゆがみを正すべきでしょう。

ここではテレビの情報番組について書いてきましたが、新聞、雑誌、ウェブなどにも該当する「メディア全体の問題」とも言えます。たとえば、私のもとにも雑誌やウェブメディアから「こういう企画で、こういう流れでやりたいのですが、こういうコメントができますか?」という形の依頼が多く、そのようなオファーをしてしまう理由は、テレビの情報番組とほぼ同じ。そこに公正中立さはなく、編集長や編集デスクの意図ですべてが決まってしまい、専門家の肩書きと名前を借りているだけにすぎません。

このような制作姿勢のメディアは、多くの情報にふれ、賢くなった現代の人々には通用しなくなっていくでしょう。だからこそメディアとしての原点に立ち戻った公正中立な報道が求められているのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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