新車販売が3割減!工場休止「長期化」の現実味 新型コロナが大打撃、5月はさらに悪化へ

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中古車相場が崩れ始めた点も新車販売における大きな懸念材料だ。新車と同様に、中古車でもコロナ騒動下で消費者の購入意欲が減退。さらに、海外のロックダウン(都市封鎖)の影響で輸出需要も落ち込み、中古車の流通価格が大幅に下がり始めている。

西日本のトヨタ系販売会社幹部は、「中古車の相場が崩れたため、3月まで100万円で下取りはできていた中古のカローラが、4月には70万円でしか買い取れなくなった」と言う。下取り価格が下がれば、その分、新車に買い替える際の金銭的負担が増え、新車購入意欲が一段と冷え込みかねない。

内需激減で国内生産にも大きな打撃

国内新車販売の大きな落ち込みは、自動車メーカーの国内工場の操業度に直結する。国内における2019年の自動車生産台数は968万台(商用車含む)で、内訳は国内販売向けと輸出向けでほぼ半々。日本車メーカー各社は今年4月以降、国内でも大幅な減産を余儀なくされているが、これは主に北米など海外需要の急減に起因したものだ。

世界を見渡すと、新型コロナの感染拡大で自動車の主要な市場は軒並み需要が激減しており、ヨーロッパは3月の新車販売が前年同月よりも52%減、アメリカも38%落ち込んだ。いずれの地域も依然として販売店の閉鎖や外出制限が続き、最大の輸出先であるアメリカの4月の新車販売は壊滅的な状況だ。

こうした中にあって、日本での新車販売は3月まで比較的に落ち込み幅が小さく、それが国内生産を下支えしていた。その内需までもが底割れすれば、完成車メーカーだけではなく、部品メーカーなどの下請けを含む国内工場の長期稼働停止が現実味を帯びてくる。工場で働く従業員の雇用にも悪影響が避けられない。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

当初5月6日までとされていた国内の緊急事態宣言は1カ月程度延長されることが確実となり、6月の販売台数を左右する5月の新車受注も相当に厳しい数字になる。宣言が解除されても、経済活動停止で国民の所得が減少し、高額な耐久消費財である新車販売の急激な回復は期待しづらい。

日本経済の屋台骨で最大の製造業である自動車産業。頼みの内需までもが新型コロナ禍で大幅に落ち込み始め、国内工場の操業を維持できるかどうかの重大局面を迎えている。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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