アメリカは「コロナ後」社会主義へと向かうのか 日本人はわからない「死者6万人」の重い意味

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これら3000万人のうち、かなりの部分が仕事と同時に医療保険も失っている公算が高い。となれば、無保険者の数も大きく増えていることだろう。無保険者がコロナウイルスに感染した場合、現行の医療制度では自己負担が4万ドルから最高で7万5000ドルになるといわれている。これでは無保険者は、症状があっても医者に行くことをためらい、結果としてますます感染が拡大してしまう。

そこで新型コロナウイルスに限り、無保険者の治療費は連邦政府予算から支出されることになった。3月27日に成立した総額2兆ドルの緊急対策費のうち、病院向けの財源1000億ドルから拠出する。給付水準は、メディケア(高齢者向け保険)と同額である。アメリカの2兆ドルの対策費というと、「国民1人当たり1200ドルの現金給付」の話ばかりが伝わってくるが、実はいろんなものが入っているのである。

もっとも、医療現場からは、患者が複数の疾患を抱えている場合、どこまでがコロナ治療で公費扱いとなり、どこからが患者固有の疾患で費用を請求すべきなのか、線引きが難しいとの声があがっている。特に高齢者は、何らかの既往症を持っていることが多いので、実際問題として悩ましいところであろう。

トランプ政権が「気前がいい」2つの理由とは?

ともあれ、アメリカはなりふり構わず病気を封じ込めようとしている。「トランプ政権は気前がいいな」と思われるかもしれないが、それにはおそらく2つの理由がある。

ひとつは表向きの理由で、医療を受けられない人を放置しておくと、そこで感染が蔓延してしまうからだ。すると医療崩壊のリスクが高まり、コロナウイルス収束のタイミングは後ずれすることになる。およそ感染症対策の難しい点は、「他人の健康状況が自分の健康に影響すること」であろう。自分だけが家に籠って安全にしていても、他人がリスクの高い生活をしていると、結局は終息が遅れてしまう。国全体で取り組まなければならないのである。

もうひとつは裏の理由で、政治的なものである。ドナルド・トランプ大統領としては、ここはバラマキでもなんでもいいから不満を抑え込まないと、オバマケア拡大の議論につながるのは困るのだ。それは自らの再選戦略にかかわってくることでもある。

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