アメリカは「コロナ後」社会主義へと向かうのか

日本人はわからない「死者6万人」の重い意味

逆に民主党側は、今年の大統領選挙では本気で「国民皆保険制」(Medicare For All)を訴えてくるだろう。「メディケア」と「メディケイド」が誕生したのは1965年のこと。「偉大な社会」計画を唱えた民主党のリンドン・ジョンソン大統領の時代であった。

そして2010年になって「オバマケア」が成立した。州ごとに「エクスチェンジ」と呼ばれる医療保険の取引所を創設し、そこに補助金を投じて保険料の負担を軽減した。メディケイドの受給資格も拡大した。これらの工夫で無保険者は大きく減った。

サンダース氏の主張は時代を先取りしていた?

しかし「それでは足りない」、と訴えたのがバーニー・サンダース上院議員である。

2016年選挙で、民主党のエスタブリッシュメントたるヒラリー・クリントン氏を相手に出馬したとき、彼の公約はあまりにも極端であるように思われた。国民皆保険制の導入、企業や富裕層への増税、大規模な気候変動対策、学生ローンの免除などである。それから4年が過ぎ、2020年選挙でこれらの政策は、民主党支持者の間でごく普通のものになっていた。この間に民主党が左傾化したとも言えるが、それだけサンダース氏が時代を先取りしていたとも言える。

あいにくコロナウイルス騒動が全米に広がる中で、サンダース氏が唱える「革命」は浮世離れした印象となり、支持者を熱狂させるカリスマを発揮する集会という機会も失われた。民主党支持者は、「現実的」なジョー・バイデン候補の下に集結しつつある。サンダース氏の主張は、バイデン氏の政策に埋め込まれていくだろう。

以前、といってもほんの2カ月前に、筆者は当欄でアメリカにおける「社会主義」の可能性について投稿した(「トランプ対バーニー」ならトランプ圧勝なのか~アメリカの「社会主義ブーム」は結構ヤバいぞ) 。

あれを書いた時点では、正直「まさかね…」という思いがあったのだけれども、コロナウイルスとの戦いがアメリカにここまで大きな犠牲をもたらしているのを見ていると、今は何があっても不思議ではないという気がしている。

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