野村克也氏が野球選手を目指した「本当の理由」 野村氏が選んだ“人生最大の戦略"とは?

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野村克也氏も、野球の世界を選ぶことで、やがてプロの世界に入り「野球というスポーツに適したリソースを持つ集団」の中で、新たな勝負をすることを強いられました。高校までは、生まれ持ったリソースで勝つことができたのに、「野球に適した運動能力を持つライバルたち」という、同種のリソースを持つ次の競争が始まったのです。

野村氏と同時代には、長嶋茂雄選手、王貞治選手など、スターの資質と実力を兼ね備えた人たちがいました。野村氏は、彼らと同じような存在(ポジション)を諦め、地味ながらも実力があり、冷静にデータから優位点を探り、そして勝利を手に入れる、というのちのデータ野球に通じる、独自の戦い方を身に付けて、スター街道を歩み続けた長嶋選手、王選手とは違う活躍の道(ポジション)をやがて見つけていったのです。

長期的な視点から見た「回答」を知っている、凄み

企業の長期的な繁栄に寄与する要素が、リソース45%、ポジション15%、残り40%は不確定要素。ならば戦略理論の長期スパンの結果を知る強みは何か。時間の経過で、次第にどんな差が生れていくのかを予見できることです。

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どんなに大きなチャンスが見えても、チャンスに適したリソースがなければイバラの道になる。チャンスが見えた者は、自分以外の(最適な)リソースとパートナーシップを作り、そのチャンスを獲得するコーディネーターとなるべきか。

一方、リソースがある者は、自己資源を最大限活用しながらも、相乗効果があるポジションを獲得することを狙い、さらに強固な勝者への道を歩むべきであることなど。

長期的な視点から戦略を理解することは、私たちに相乗的な強みを与えてくれるのです。歴史をより長くさかのぼることで、未知の危機や次の時代に対処する知恵を見つけられます。戦略とは歴史であり、歴史とは、より長いスパンでベストな解決策を模索できる能力なのですから。

鈴木 博毅 ビジネス戦略、組織論、マーケティングコンサルタント

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すずき ひろき / HIroki Suzuki

1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。貿易商社にてカナダ・オーストラリアの資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略論や企業史を分析し、新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。『「超」入門 失敗の本質』(以上、ダイヤモンド社)、『実践版 孫子の兵法』(プレジデント社)、『3000年の叡智を学べる 戦略図鑑』(かんき出版)など著書多数。

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