ウクライナ危機は最悪期を過ぎた 丸紅経済研究所の榎本シニア・アナリストに聞く

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痛みを伴う改革への準備がないウクライナ国民

――今後のリスクなど注目すべきことは。

ロシアからウクライナ向けの天然ガス価格が4月から大幅に値上げされた。過去に取り決められた優遇割引価格の契約が破棄されたためで、これが混迷するウクライナの政治経済にどのような影響を与えるか、注目する必要がある。

ウクライナはガス供給の約6割をロシアに依存しており、新政権を承認しないロシアはガス供給でも圧力を強めている。ロシアがウクライナを締め上げれば、欧米のウクライナ支援コストはさらに膨らむ。つまり、これは欧米の対ロシア制裁に対する、ロシアの間接的報復と位置付けられる。

榎本 裕洋(えのもと・やすひろ)●1971年生まれ。95年大阪外国語大学卒、丸紅入社。2001年から丸紅経済研究所。専門はマクロ経済全般、ロシア経済、穀物市場、エネルギー市場。著書に「ロシア連邦がよ~くわかる本」など。

そして、5月25日にはウクライナの大統領選が実施される。ロシアがテロリスト集団と名指しする過激民族主義勢力「右派セクター」の動向など、選挙が大きな混乱なく、民主的に行われるかが注目される。

もしロシアがこれらの勢力に反応して動けば、欧米も追加制裁に踏み込むことになる。また、7月の決選投票までもつれ込む可能性も高く、その場合、政治的空白が国内外情勢に与える影響が懸念される。

ウクライナ国内の世論は、以前から保守派(親ロシア派)と革新派(親欧米派)の間で振れやすい。国際通貨基金(IMF)の金融支援に伴い、緊縮財政など痛みを伴う改革を余儀なくされれば、保守派が勢いを挽回する可能性も十分ある。ウクライナ国民は痛みに対する準備ができていない。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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