ウクライナ危機は最悪期を過ぎた 丸紅経済研究所の榎本シニア・アナリストに聞く

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ただ、モメンタム(勢い)という意味では、非常に上向きにある。昨年4月に安倍晋三首相が多数のビジネスマンを引き連れて訪ロした際には、大企業だけでなく、地方企業からも出て行っている。

特に関係が深いのがエネルギー関係で、日本の対ロ輸入のうち原油と天然ガスだけで輸入全体の約7割を占める。石油製品、石炭を含めれば8割強だ。対ロ輸出では、乗用車、自動車部品、ゴムタイヤで全体の3分の2近い。まだ貿易に偏りはあるが、将来的に大きなポテンシャルを秘めているのが対ロ関係だ。

天然ガスの世界地図に大きな変更はない

――ロシアへのエネルギー依存度の高い欧州が、ウクライナ危機を受け、シェールガス・オイルを増産する米国とのエネルギー関係を深めるとの見方もある。

欧州諸国は現在、天然ガスの消費量の約3割をロシアからの輸入に依存している。もし、これを米国からのガス輸入に切り替えていくとすると、液化天然ガス(LNG)での輸送コストに加え、輸入基地の建設コストで何兆円もの新規投資が必要となる。

ロシアからの既存のパイプラインガスに対して、米国のシェールガスがコスト競争力を持てるとは考えられない。欧州としては、ロシアとのエネルギー関係を維持できれば、それに越したことはない。

ロシアから欧州へのガス輸出は、ソ連時代(1973年のパイプライン初開通)を含め、総じて安定している。そのため、今回の危機においても、欧州の経済界は冷静に事態の推移を見守っている。

むしろ、ロシアのガスプロム(株式の過半数を政府が握る準国営天然ガス会社)のほうが先手を打って、欧州各国と値引き交渉を行っている。そのため、今回の危機によって天然ガスをめぐる世界地図が大きく塗り替えられることはなく、経済合理性に従って収まっていくと思われる。

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