ウクライナ危機拡大、最悪事態回避へ神経戦

日欧ロの深い相互依存、紛争拡大の抑止力になるか

昨年11月、セルビアで「サウスストリーム」の建設が始まった(AP/アフロ)

ロシアの実質統治下に入ったクリミア自治共和国議会が3月11日に独立宣言を行うなど、ウクライナ情勢は緊迫と混迷が続いている。欧米が対ロ制裁を発動する中、2月中旬に反政権デモ隊を狙撃したのは親欧米暫定政権側の民族主義過激派だったとする情報まで浮上し、現地世論は動揺している。米ロ関係はソ連崩壊後最悪レベルに落ち込んでおり、「第2次東西冷戦」とも言われ出した。

今後の最悪のシナリオは、経済封鎖によるロシアの完全孤立化、欧米を巻き込む軍事衝突だ。そうなれば、欧州や日本は大きな影響を受ける。日本の場合、サハリンから液化天然ガス(LNG)を買えなくなる。日本が輸入するLNGの約10%がサハリン産。スポット価格の割高なカタール産LNGなどで埋め合わせするとなると、コスト面で大きなインパクトになる。

しかし、最悪の事態を回避するべく外交交渉が進む。しばらくは、粘り強い交渉によってロシア、ウクライナ両国の妥協点を模索する展開が続きそうだ。

「欧ロエネルギー同盟」

「ロシア人とウクライナ人は言語的、宗教的に兄弟のような関係。ロシアがウクライナに強硬な軍事介入をするとは思えない」とロシア駐在経験のある商社マンは話す。

そうした国民感情に加え、危機拡大の抑止力となるのが、日米欧とロシアとの緊密な経済関係だ。

とりわけ欧州とロシアの関係は深い。最たるものが天然ガス取引である。欧州は天然ガスでのロシア依存度が約30%に上る。すべてパイプラインを通じて輸入しており、ウクライナ経由が全体の6割を占める。

2011年に稼働した「ノルドストリーム」はロシアが半分出資し、残りは独、仏、蘭の出資。冒頭写真の「サウスストリーム」もロシアと独、仏、伊が折半出資している。「ロシアと欧州主要国は“エネルギー同盟”ともいえる強い関係にある。1973年のパイプライン初開通以来、40年にわたり莫大な利益を共に得てきた双方が、それを失うようなことは考えにくい」と、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の本村真澄・担当審議役は見る。

欧州では情勢悪化を警戒し、「地下貯蔵施設でのガス備蓄を増やしており、数カ月分は確保しているもよう」(北出大介・三井物産戦略研究所研究員)。とはいえ、関係が一度断絶すれば、その修復には何年かかるかわからない。ガス価格も高騰し、「スポットでの代替輸入による負担急増は目に見えている」(同)。

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