ウクライナ情勢がさらに悪化すると影響甚大 本村真澄・JOGMEC担当審議役に聞く
――ロシアによるクリミア実効支配の意図をどう見るか。
ロシアは、2010年のウクライナに対する天然ガス値引きの見返りとして、クリミアのロシア海軍基地(セバストポリ軍港)の使用権延長(17年から25年間)を得た。その合意が、親欧米の暫定政権によって反故にされるリスクを考え、予防的に先手を打った形だ。暫定政権は民衆蜂起による革命政権であり、政策が極端に振れやすい。ロシアの行動はその強い反作用ともいえる。
実際、暫定政権はロシア語を準公用語とする言語法を廃止し、ウクライナ語のみを公用語とした。ロシア系住民は二級市民扱いとなってしまう。苦しい立場に置かれるロシア系住民を保護することが、ロシアがクリミア(ロシア系住民が6割以上でロシアへの帰属意識が強い)に介入する大義となった。かつてバルト3国においてロシアを公用語から外したことに関して、EUも民族主義を助長し、不安定要素になるとして反対した経緯がある。
ガス輸出の6割がウクライナ経由
――ウクライナ危機がさらに深刻化するリスクは。
ウクライナの重要性は、ロシアから欧州へ輸出される天然ガスの大半がウクライナを経由していることにある。かつては欧州向け輸出全体の8割がウクライナ経由で、残り2割がベラルーシ経由だった。2011年から北のバルト海を通るノルド・ストリームというパイプラインが稼働したため、ウクライナ経由は6割に低下。今年はノルド・ストリームの稼働率が上がり、約5割になる見通し。さらに、今年から黒海を経由するサウス・ストリームが着工される予定で、ロシアはウクライナの影響力を下げるべく努力してきている。
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