ウクライナ危機は最悪期を過ぎた

丸紅経済研究所の榎本シニア・アナリストに聞く

ロシアによる事実上のクリミア半島併合後、膠着状態が続くウクライナ情勢。今回の危機の本質や今後の行方、日本経済への影響などについてロシアの政治経済に詳しい丸紅経済研究所の榎本裕洋シニア・アナリストに聞いた。
ウクライナの首都キエフで政変の犠牲者に追悼をささげる人々(写真:ロイター/アフロ)

ロシアの行動の背景にNATOに対する恐怖

――ウクライナ危機の本質をどう考えているか。

冷戦時代のソ連封じ込め政策で有名な米国の外交官ジョージ・ケナンはかつて、ソ連の脅威は“ロシア的要素”によるもので、共産主義によるものではない、と指摘している。そして、ロシア的要素とは外部や異質に対する猜疑心と恐怖だと言う。

今回の危機は、欧米の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)に対するロシアの恐怖心が爆発したものといえるだろう。ロシアがクリミアに黒海艦隊基地を確保する目的は、NATOに対する恐怖の克服にある。

危機を招いたという意味では、米国の失敗もあった。今回のウクライナ政変において、2月21日にはヤヌコビッチ前大統領と野党リーダーが危機回避の文書に署名し、事態は収拾に向かうかに見えた。ところが、翌日に事態は急変。身の危険を感じたヤヌコビッチ氏は首都キエフを脱出した。

その間、ヤヌコビッチ辞任を要求した院外勢力の中には過激派が含まれ、その過激派を支援していたのが米国だとみられている。過激派政党は新内閣でもポストを確保。黒海艦隊の追放やロシア語の駆逐といった彼らの民族主義的企てにプーチン大統領が鋭く反応し、今回の事態に至った。もちろん、軍事力を用いたクリミア併合が国際社会を敵に回す暴挙であることは明白だ。

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