コロナで爆発した「在宅勤務できない人」の怒り アメリカ「反封鎖デモ」参加者たちの言い分

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ところが、ホイットマー知事は封鎖を緩めるどころか外出禁止令を1カ月延長し、制限措置を強化した。別荘への移動を禁止したり、大型店にも不要不急と見なされる園芸用品やペンキ、床材などの売り場を閉鎖するよう求めたりしたのだ。

「人々は要請に従っていたが、知事の新たな禁止令とその強引なやり方は、限界を超えて独裁的に映った」とドーントは語る。同氏の団体は抗議集会を呼びかけるフェイスブックの広告に250ドルを支出した。

「トランプとは関係ない、生活がかかっているんだ」

抗議集会には、軍隊式のライフルを携えて州議会議事堂の階段に立った一団を含む、あらゆるタイプの人々が集まった。州警察の発表によれば、参加者数は3000〜4000人。だが参加者および主催者によれば、そのうちのほとんどは車内からデモに参加したという。

デトロイト郊外で清掃業を営む4児の母、クリスティ・シー(39)は、多くの人々にとって閉鎖がいかに厳しいかを政治エリートに訴えるため集会に加わったと話した。シーの顧客には障害者もいて、そのうちの1人は車いす生活を送っている。8人いる従業員は無給休職となった。

「クローゼットの断捨離とか、ネットフリックスで見た動画について楽しそうに話をしている人は多い。でも、そんな隔離生活を送れない人はものすごくたくさんいる」とシーは言う。「誰もがおしゃれなルームウェアを着てZoom(ズーム)でビデオ会議をしているわけじゃないんです」。

ミシガン州南部にある害虫駆除会社の副社長、フィリップ・キャンベル(39)は、都市封鎖によってもたらされた経済的苦痛はウイルスそのものよりも社会的に害が大きいと感じることがあり、それを州知事にわからせるためにランシングまで車を走らせたと話す。友人に医療関係者がいるからウイルスの危険性は知っていた。それでも自分たちが背負わされている犠牲を真剣に受け止めてもらいたかった、というのだ。

「(外出禁止は)バランスに欠けた措置だという感覚を持っている市民がいることを知事にわかってもらいたかった」と、約30人の従業員を抱えるキャンベルは語る。「トランプとは関係ない。そんなことより労働者や私たちの生活がかかっているんだ。倒産したくない、不況に引きずり込まれたくないということだよ」。

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