フェラーリに学ぶ「少量生産メーカー」の生き方 4000人の力で開発から製造までできる理由

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構内に設けられたペイント棟も、自動化された中に職人技を生かすというポリシーが生かされている。フェラーリならではの独特の手法が、至る所に今も生きているのは間違いない。

ペイント棟で塗装されるボディ(写真:フェラーリ)

また、「ラ・フェラーリ」といった限定生産の“スペチアーレモデル”は、基本的にレーシングカー部門で組み立てが行われる。数十台、数百台という非常に小さい製造ロットに対応するノウハウがあるのだ。

ラインを出ていく完成車両のクオリティには、もはや少量生産車というエクスキューズはまったくない。組み立てラインを出た車両は、工場内にある8kmのテストコースを走行し、あらゆる路面状況でのテストが行われ、適切な挙動を実現するための調整を行う。

そして、マラネッロ周辺の一般道でボディプロテクションを装着しての最終テストドライブを行う。これら走行テストを含む部外者立ち入り厳禁のQCセクションで、すべてのフェラーリは完璧に仕上げられ、それに合格した車両のみが顧客の元へと旅だっていく。

フェラーリの持続的なビジネスに学べ

日本においては、500台の限定生産を謳ったレクサス「LFA」、はたまた一日40台という“非常識”な少量生産を謳ったホンダ「S660」やトヨタ「センチュリー」といった限られた少量生産モデルを見いだすことはできる。

内外装のオーダーメイドにより世界で1台だけのフェラーリを作ることができる(写真:フェラーリ)

しかし、フェラーリのように少量生産をコンスタントに続けることによって、持続的なビジネスを進めていくメーカーは存在しない。

もちろん、今や自動車産業で少量生産を行うことは容易なことではないし、日本国内においてはなおさら難しい。それを行うためのサプライヤー網、人的資源、法的な整備など課題が山積みだからだ。

しかし、これから減少が予想される自動車需要を考えると、自動車メーカーは数の拡大だけを目指して生き延びていくことができるのだろうか。そういった将来に対する展望も踏まえ、フェラーリの進めている戦略を分析するのは大きな意味があるはずだ。

越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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