フェラーリに学ぶ「少量生産メーカー」の生き方 4000人の力で開発から製造までできる理由

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現在のマラネッロ工場は、フェラーリが創立された1947年当時と同じ場所に位置するが、その敷地は大きく拡大されている。

旧エントランス付近に残された一部を除いて、近代的なレイアウトのビルディングへとリノベーションが行われたし、近隣のフィオラノテストサーキットに沿っての拡張計画もあるようだ。

フェラーリファクトリーの全景(写真:フェラーリ)

25万平米の敷地内は、市販車生産部門とF1レースカー開発・製造部門、そして 開発部門へと大きく分かれる。構内は充分な広さの通路が確保され、それぞれの“道”には 「エンツォ・フェラーリ通り」というように、フェラーリのヘリテイジにちなんだ名前が付けられる。

元来、エンジン開発にルーツを持つレース屋であるフェラーリだけに、エンジン製造工程には大きなこだわりが見られる。エンジン・アッセンブリー部門だけで、鋳造、エンジンパーツ仕上げ、エンジン組み立てのための3つの建物が敷地内に存在している。

熟練工が手作業で作るV8、V12エンジン

マセラティを傘下に入れた2000年に大きなリノベーションが行われ、かつて外注に頼っていた部分も、独自の最新技術により内製化を実施。それによって品質も飛躍的に向上した。施設内は当時、フェラーリのトップであったモンテゼモロ会長の好みで、竹をはじめとするグリーンが植え付けられ、作業環境や周囲の環境に対する配慮も行われた。

最終的なエンジンの組み立てが行われるアッセンブリーライン(筆者撮影)

鋳物施設でアルミ合金が鋳型に流し込まれ各エンジンパーツ形状となったものが、エンジンパーツ最終仕上げ施設に到着すると、金属加工作業へと進む。切削、研磨、洗浄や表面熱処理加工が実施され、エンジン組み立て施設へ搬入され、最終的な組み立てが行われる。

超低温でのバルブシートの挿入など、いくつかのロボット作業はあるものの、ここで作られるV8、V12エンジンは、熟練工の技による手作業の比重が一般メーカーと比較すると、とんでもなく大きい。エンジンは完成後にベンチテストが行われ、それに合格したものだけが初めて完成品となる。

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