「不機嫌な子」をスッと落ち着かせる意外な方法 大人にも使える「不安から離れる」ためのコツ

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また、呼吸セラピーは、科学的にも大いに効果を期待できます。人間はストレスにさらされたとき、浅く速い呼吸をしがちです。すると酸素が全身にいきわたらず、脳も体も緊張状態になり、ストレスに対して根本的な対処をする余裕がなくなります。そんなとき、深くゆっくりした呼吸を意識することで、副交感神経が優位になって脳の働きが落ち着き、前向きな気持ちを取り戻すことができます。

子どもと一緒にスキンシップしながら

取り入れ方のポイントは、子どもと一緒にスキンシップしながら、繰り返しやってみることです。本のメソッド通りでなくて構いません。子どもが喜びそうな言葉やリズムに、自由に置き換えてアレンジしてみてください。そして子どもが怒ったり、泣いたりしたとき、「こんなとき、絵本の中のガストンはどうしてたかな?」と導いてあげるといいでしょう。

ママやパパに、「泣いてるお顔がニッコリになったね!」と喜んでもらえたことや、スキンシップしながら一緒に呼吸法をためしてもらえたことも、子どもにとっては大きな安心感につながるでしょう。

この呼吸セラピーはぜひ大人にも試してもらいたい方法です。実は、子どもが不安を感じる原因は、周囲の大人にあることも多いのです。とくに最近は、コロナウイルスによる自粛の影響で、大人も子どももストレスが増大し、不安が高まっていると感じます。

大人自身が不安を感じていて、常に緊張した状態にあると、子どもにあれこれ先回りして指示したり、思うようにいかないとすぐに叱ったりすることが多くなり、子どもはちょっとしたことでイライラしたりビクビクするようになってしまいます。大人が呼吸セラピーで自分の感情をととのえ、子どもへの心配を信頼に変えることで、子どもは親からの安心感を受け取り、自立した親子関係をつくっていくことが可能になるでしょう。

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子どもの脳は、恐れや悲しみ、恐怖などのネガティブな感情を感じる時間が短いほど、健やかに育ちます。「呼吸セラピー」で、不安から離れる時間が多くなれば、人間関係にも、勉強やスポーツ、将来は仕事にも、プレッシャーなくのびのびあたっていくことができるでしょう。「不安があっても、大丈夫」。ネガティブな感情を呼吸セラピーで手放せるという自信は、大人になっても心のよりどころとなってくれるはずです。

成田 奈緒子 小児科医・医学博士、公認心理師

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なりた なおこ / Naoko Narita

子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。 1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。http://www.kk-axis.org/

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